■一次感情に目を向けると建設的に解決できます
夫婦ゲンカなどで「あなたは私の気持ちを理解してくれない!」などというセリフが登場することがあります。言葉に出さなくてもそういう気持ちになった経験を持つ人もいるでしょう。マンガもこのパターンです。しかし実は、「自分の気持ちをわかってくれない」と思っている本人も、自分の本当の気持ちを理解していなかったりします。
というのも、怒りは二次感情であり、その裏には一次感情が潜んでいるからです。
コップをイメージしてください。怒りはちょうどコップからあふれ出た水のような存在です。コップには悲しい、つらい、苦しい、寂しい、不安などマイナスの一次感情がたまっています。一次感情で心のコップがいっぱいになると、怒りとなってあふれてしまうのです。
前のページのマンガの奥さんの一次感情は「不安」でしょう。旦那さんの健康を心配する気持ちや、お酒で失敗してしまう可能性、家庭が壊れてしまうのではないかという不安がたまって、その結果「怒り」となって表現されるのです。怒りの裏にある不安に対処しなければ、いつまでも怒りはあふれ続けることになるのです。
あるパソコンメーカーに寄せられたクレームについて相談を受けたことがあります。
メーカーは故障したパソコンを修理したのですが、お客様の怒りがおさまらないというのです。メーカー側は「ちゃんと修理したのに」と頭を抱えていましたが、お客様の言葉をよくよく聞いてみると、「パソコンが壊れたせいで、恥をかいた」ことを訴えられています。
つまりお客様の一次感情は「恥をかいてつらかった」であって、その気持ちを理解してほしかったわけです。
怒りを感じたとき、また相手を怒らせてしまったときに大切なのは、「怒りの奥にある一次感情は何か」を探ることです。
怒りそのものに対処するのではなく、一次感情に対処し、解決に導くほうが効果的です。つらさ、悲しさ、不安などに向き合って、その解決に向けて話し合い、行動すると、自然と怒りがおさまっていきます。
■理想が高すぎると怒りを感じやすくなります
私たちは誰しも「理想の自分像」を持っています。理想のビジネスパーソン、理想の上司、理想の妻(夫)、理想の母(父)、理想の娘(息子)、理想の住まい、理想の体型など、言い出したらきりがありません。自分が置かれた状況ごとに理想の自分像があるのではないでしょうか。
なりたい自分像があるのは、決して悪いことではありません。理想を求めて努力を重ねるのは、仕事の姿勢としても生き方としてもすばらしいものです。