会議、プレゼン、報連相、企画書、資料作成……。ビジネスのさまざまなシーンで「言いたいことはあるのに、うまく言葉にできない……」と悩む人が多くいます。
最近、そんな「言語化力」に対する悩みを、実は多くの人が抱えているのかもしれないと私自身が感じるようになりました。特にそれを強く感じるのが、本屋さんを訪れたときのことです。
ここ数年、本屋さんの棚には「伝え方」に関する実にさまざまな書籍が並ぶようになりました。いわゆる「コミュニケーション本」と呼ばれる類の本です。もしかしたら、あなたも一度はそういう本をお読みになった経験があるかもしれません。もし読んだことがあったら、果たしてどんな感想をお持ちになったでしょうか?
誤りを恐れずにいうと、私は「伝え方」に関する本では、あなたが抱えている「言語化」に対する本質的な悩みには応えることができない、と考えています。なぜなら、「言語化」と「伝え方」はまったく別のスキルだからです。
「言語化」と「伝え方」はまったく別のスキル。そのことをご理解いただくために、そもそも「言葉を使ったコミュニケーションの本質」について触れる必要があります。
コミュニケーションとは、そもそも「何を言うか」と「どう言うか」に分解することができます。たとえば、
などは、物事を「どう言うか」の話です。前置きを置いたり、語尾を変えたり、例えてみたりということはありますが、「言う“内容”」そのものが変わるわけではありません。この「どう言うか」のためのスキルが「伝え方」です。
一方で、私たちが何か言葉を発する際、「どう言うか」を考える前に、そもそもの「言う“内容”」を考えるはずです。この「言う“内容”」こそが「何を言うか」であり、そのためのスキルが「言語化力」です。
「伝え方」を学んでも「言語化力」が身に付かない理由がわかっていただけたでしょうか。
この2つはコミュニケーションの中でも、別の工程のためのスキルなのです。「どう言うか」のスキルをいくら身に付けても、「何を言うか」そのものをよくすることはできません。
では、「何を言うか」と「どう言うか」、どちらが大事なのでしょうか。このことを、ある会議の様子を例に取りながら、より丁寧にご説明したいと思います。あなたが主人公です。あなたが「意見を聞く側」になったと仮定して、架空会議をしてみましょう。