「“好き”を仕事にしたい人」が知らない4つの真実

「好き」「憧れ」を仕事に…とこだわりすぎると、思わぬ落とし穴にハマる可能性について解説します(写真:buritora/PIXTA)
いまビジネスの世界で、「リスキリング」(学び直し)が注目を集めている。
リスキリングの本質は「変化する社会で、今後必要なスキルや技術を学ぶ」ことで、そこでは「独学力」が決定的に重要になる──。
30年以上にわたり、人事や人材マネジメントの研究を続けてきた高橋俊介氏が、このたび「社会人の学び方」を1冊で完全解説した新刊『キャリアをつくる独学力──プロフェッショナル人材として生き抜くための50のヒント』を上梓した。同書は、発売後たちまち大増刷するなど、話題を呼んでいる。
世界有数の人事コンサルティング会社の日本法人代表を務め、日本に「キャリアショック」という概念を広めた「キャリア論の第一人者」でもある高橋氏が、「『"好き"を仕事にしたい人』が知らない4つの真実」について解説する。
 

「"好き"を仕事にしたい」という人は多いが…

『キャリアをつくる独学力──プロフェッショナル人材として生き抜くための50のヒント』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

「好きなことを仕事にしたい」

「憧れの仕事をしたい」

とくに若い世代は、仕事についてこのように考えている人が多いはずです。

もちろん、「好き」や「憧れ」を仕事につなげたいと考えるのは、おかしなことではありません。

しかし、ビジネスの世界は、スポーツや芸能の世界とは違いま

「好きなこと」「憧れの仕事」=「自分に向いている仕事」であるとは限らないのです。

今回は、「好き」「憧れの仕事」を追い求める人ほど見失いがちな「4つの真実」を紹介しつつ、それ以上に大切な「やりたい仕事」を見い出し、「キャリアを築く」「人生を豊かにする」ためのヒントを紹介します。

【1】「好きなこと」「憧れの仕事」=「自分に向いている仕事」とは限らない

1つめは、「好きなこと」「憧れの仕事」=「自分に向いている仕事」であるとは限らないということです。

「好き」や「憧れ」にこだわりすぎた結果……

「好き」や「憧れ」にこだわりすぎれば、どうなるでしょうか。

「好きな仕事をするため」という理由のみで転職を繰り返したり現在の仕事が「好きではない」という理由のみで意欲を失ったりすれば、キャリアの迷子」になりかねません。

もちろん成功する可能性もありますが、往々にして「自分が憧れる仕事」は「多くの人が憧れる仕事」でもあり、なおかつその仕事に就ける人が少なければ、実現の可能性は低くなるでしょう。

また、「一直線に目標の仕事に就く」といった「最も無駄のないキャリア」にこだわるのは、「無駄」がないだけに、状況が変化したとき「最も脆弱なキャリア」になります。

それに、「憧れの仕事」に就けたとしても、実はその仕事が「自分に向いていない仕事」というケースも、実際にはよくあることです。

【2】「好き」や「憧れ」が長続きするとは限らない

2つめは、「好き」や「憧れ」が長続きするとは限らないということです。

いま自分が「好き」「憧れ」と感じることは、5年後、10年後も本当にそのままでしょうか?

とくに社会に出る前の時点で、「自分に向いている仕事」を簡単に判断することはできませんし、仕事を始める前に「好きだと思う仕事」=「向く仕事」とは限りません

仕事は「数十年にわたって『人生の核』となるもの」であり、「好き」や「憧れ」が長続きするとも限らないのです。

採用の際、エントリーシートや面接で「入社したら5年後、どんな仕事をしていたいか」「10年後の目標を述べよ」などと答えさせる企業は少なくありません。