2022年の年明けに、私たちはあるアンケート調査を実施しました。対象は週に3回以上、社外の人とオンライン上でコミュニケーションをとっている日本のビジネスパーソンです。そのなかに、次のような質問がありました。
「あなたは、オンラインコミュニケーションツールを使いこなせない人との取引を躊躇しますか?」
すると、90%の人がイエスと答えたのです。
「使いこなせない人」とは、オンラインコミュニケーションに不慣れだったり、コミュニケーションのスタイルがオンラインに合致していない人のことで、こういう人とやりとりすることで、コミュニケーションエラーが起こったり、情報連携のスピードが追いつかなかったりするのを回避したいというのがおもな理由でした。
1つひとつのエラーは小さくても、それが積み重なると「あの人とオンラインで打ち合わせをするのは面倒くさい」と思われて、知らぬ間に敬遠されてしまうかもしれません。この結果からも、もはや「オンラインで良好なコミュニケーションができない企業や個人は、時代に取り残される」と言っていいでしょう。
特に、日本には、自分の気持ちをストレートに口に出すより相手に察してもらうことを期待する文化があり、これがオンライン上のコミュニケーションをいっそう難しくしています。画面越しでは、察してもらうことを期待できないからです。
こちらから主張しなければ、基本的に何も返ってきませんし、何かを期待していても、口に出して(あるいは文章で)伝えなければ何も伝わらないのです。つまり、オンラインコミュニケーションに求められるスキルは、従来のコミュニケーション術とは、まったく別物なのです。
本稿では、300社、1万人以上のビジネスパーソンと画面越しのコミュニケーションを重ねるなかから見えてきた、オンラインコミュニケーションのいくつかのコツについてお伝えしましょう。
オンラインコミュニケーションでは、場の空気感や言葉のニュアンスを共有できません。そのため、対面なら少しくらい話にまとまりがなくても「この人は今こういうことを話そうとしているんだな」と、ある程度理解できることが、画面越しの音声と映像だけが頼りのオンラインでは難しくなります。
それを解消するためには、ただ漫然と話すのではなく、話し方を意識的にわかりやすく組み立てることが求められます。具体的には英語のように話を組み立てるのです。
といっても、難しいことはありません。次の2つのポイントを押さえれば、オンラインでも伝えたいことが伝わるようになります。
たとえば、商談の冒頭で、「今日のゴール」について先に知らせておくと、スムーズなやりとりができます。「本日は、A商品の〇〇が改善したことをお伝えします」「Bシステムの導入をご検討いただきたく、このような場を設けさせていただきました」というように、なんのために商談の場を設けたかを、早い段階で伝えるようにしましょう。
また、イエス・ノーの意思表示をするときにも、「私は賛成です。なぜなら……」「私は反対です。というのも……」と結論から伝え、理由は後で話すようにします。