コロナ禍で20~50代の投資が飛躍的に伸びた理由

20代から50代の就業年齢層で「投資をしている」と答えた人の割合は、前回調査の2018年から今回調査の2021年にかけて、飛躍的に伸びた(写真:Fast&Slow/PIXTA)
将来の年金は「十分にはもらえないもの」、老後の備えは「自分でしなくてはならないもの」、わかってはいるけれど、日々の忙しさに取り紛れてなかなか手が着けられない――。そんな日本人の投資意識・行動が、コロナ禍で大きく変わった。
時系列の大規模アンケート調査、野村総合研究所の「生活者1万人アンケート調査」をベースにまとめた『日本の消費者』シリーズを上梓した著者が、高まる生活防衛意識と生まれた余剰時間を背景に、将来への備えとして金融投資に着手した、現代日本の消費者の意識・行動や、企業に求められるサポートのあり方について解説する。

コロナ禍で高まる、生活防衛意識

日本の消費者はどう変わったか: 生活者1万人アンケートでわかる最新の消費動向
『日本の消費者はどう変わったか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

生活者1万人アンケート調査の最新実施時期2021年8月に、今後1年の景気の変化についての見通しについて尋ねたところ、「よくなる」と答えた人が減少する一方で、「悪くなる」と回答した人が大幅に増加し、東日本大震災後の2012年を上回る悲観傾向を示した。

コロナ禍の影響を受けた景気後退を懸念する人が多いという結果となったわけだが、2021年8月当時では全世界的に人の行き来が止まり、東京2020オリンピック競技大会を中心イベントとして盛り上がることが期待されていたインバウンド消費も享受できなかった。

国内では緊急事態宣言や「まん防」(まん延防止等重点措置)、外出自粛などの影響で観光業・飲食業を中心に消費や雇用が大打撃を受け、エネルギー関連を中心に物価上昇の兆しも見え始めていた。

そのような状況からの出口が未だ見えない2021年調査では、「世の中全体」の景気の先行きについては、過去を含めたすべての調査の中で最も悲観的なスコアとなったのである。

将来を不安に感じての生活防衛意識は、これまでになく高まったのだ。

家計見直しが行われ「学び」行動が伸長

コロナ禍のもう一つの影響として、外出自粛やテレワークの普及により生まれた「余剰時間」がある。

この余剰時間は、料理や裁縫、DIYや、オンラインレジャーを楽しむなどの丁寧な暮らし・おうち時間の充実に使われるとともに、不用品の整理や、家計のPL(損益計算書)・BS(賃借対照表)の見直しなど、モノ・カネ両面での無駄のそぎ落としと再構築にも費やされた。

家で過ごす時間が増えたことを機に、これまでの生活をじっくり振り返り、支出の無駄を見つけたり、生活水準を維持するために、将来必要な収入を計算したりした家庭も多かったようだ。

「気になってはいたが…」と忙しい毎日の中で曖昧にしていた不安を、数字の形で直視したのだ。結果、コロナ禍で増えた行動として、保険の見直し、家賃の見直し、携帯キャリアの見直し、カードローンの整理、などが見られている。

また、生まれた時間・気力の余裕を資格取得や「学び」に充てた人も多かった。通信教育や資格取得も、コロナ禍で伸びた行動だ。

中でも、これまでも気にはなりながらも「しっかり勉強してから手を着けないと、損をしてしまうかも」と構える意識が強かった金融投資について、金融知識や商品・サービス選択のノウハウなどを、落ち着いて学習できた人も多かったようだ。

さらに、「自己資金0円」を謳い文句に、株初心者に向けてスマホから簡単に株の売買ができるサービスを提供したLINE証券の取り組みや、クレディセゾンや楽天、NTTドコモなどが提供する「ポイント運用」(ポイントを使った疑似投資)サービスなど、未経験者にとって敷居の低い、「入門編」サービスが次々に登場していることも、追い風となっただろう。