「有能で知的に見られる人」の何とも意外な共通点

ユーモアのある女性
ユーモアを発揮すると、勇気や、自信、頭の回転の速さを感じさせ、地位が高くて有能そうな印象を与えます。(写真:shimi/PIXTA)
日本の企業はなによりも「真面目」であることを大切にする。ところが、それとは対照的に、アップルやピクサー、グーグルのような企業は、なによりも「ユーモア」を大切にすることで、大きく成長している。スタンフォード大学ビジネススクール教授のジェニファー・アーカーと、同校講師でエグゼクティブ・コーチのナオミ・バグドナスによれば、ユーモアにあふれる職場は心理的安全性をもたらし、信頼関係を築き、社員のやる気を高め、創造性を育むという。今回、日本語版が9月に刊行された『ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

ユーモアは脳内化学物質に変化をもたらす

カクテルの話をしよう。と言っても、テキーラベースのおいしいカクテルのことではない。

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私たちが笑うと、脳内ではホルモンのカクテルが分泌され、ハッピーな気分になったり(ドーパミン)、人への信頼が深まったり(オキシトシン)、ストレスが緩和されたり(コルチゾールの減少)、ちょっぴり高揚感が湧いてきたりする(エンドルフィン)。

私たちが仕事上のやりとりにもユーモアを効かせれば、同僚たちはこの効果抜群のホルモン・カクテルを味わえる。しかも相手の脳だけでなく、自分の脳でも、脳内化学物質の変化を起こすことができるのだ。

だが、話は神経科学だけでは終わらない。行動科学の研究には、仕事上でユーモアを用いることによって、次の4つの効果が強まることを示す豊富な事例がある。

●パワー 地位が高く知性が優れている人という印象を与え、相手の行動や意思決定に影響を及ぼす。こちらが提案したアイデアを覚えてもらいやすくなる。
●つながり 知り合ったばかりでも信頼感が生まれ、打ち解けることができる。長く続いている間柄なら、なおさら満足感を覚える。
●創造力(クリエイティビティ) それまで見落としていた関連性に気づきやすくなる。リスクのあるアイデアや型破りなアイデアを思い切って提案できる。
●レジリエンス ストレスが緩和され、挫折から立ち直りやすくなる。

マーク・トウェインはこう語ったと言われている。「人類がもっている唯一の効果的な武器、それは笑いだ」。

この秘密兵器が私たちの脳内化学物質や、心理状態や、行動にどのような変化を起こすかをしっかりと理解することで、私たちはユーモアを戦略的に活用できるようになる。

ユーモアのある人は有能に見られる

ユーモアに関する重要なコンセプトのひとつは、地位と関係がある。

世界的に有名なコメディー劇場兼研修所〈セカンド・シティ〉で、コメディーの研修に参加した仲間であるブラッド・ビターリー、モーリス・シュバイツァー、アリソン・ウッド・ブルックスが行ったある研究では、実験の参加者たちに対し、「ヴィジット・スイス」という架空の旅行会社の「お客様の声」として、スイス旅行の短い感想コメントを書いて、発表するよう求めた。

参加者たちには伏せられていたのだが、じつは、コメントを読み上げた最初のふたりは参加者ではなく、研究助手だった。

彼らが事前に用意しておいたコメントの半分は真面目で、半分はユーモアがあった(たとえば、真面目なコメントは「山でのスキーやハイキングは最高です。本当にすばらしい!」。いっぽう、ユーモアのあるコメントは「山でのスキーやハイキングは最高だし、あのスイス国旗も気分が上がる!」)……。