カクテルの話をしよう。と言っても、テキーラベースのおいしいカクテルのことではない。
私たちが笑うと、脳内ではホルモンのカクテルが分泌され、ハッピーな気分になったり(ドーパミン)、人への信頼が深まったり(オキシトシン)、ストレスが緩和されたり(コルチゾールの減少)、ちょっぴり高揚感が湧いてきたりする(エンドルフィン)。
私たちが仕事上のやりとりにもユーモアを効かせれば、同僚たちはこの効果抜群のホルモン・カクテルを味わえる。しかも相手の脳だけでなく、自分の脳でも、脳内化学物質の変化を起こすことができるのだ。
だが、話は神経科学だけでは終わらない。行動科学の研究には、仕事上でユーモアを用いることによって、次の4つの効果が強まることを示す豊富な事例がある。
マーク・トウェインはこう語ったと言われている。「人類がもっている唯一の効果的な武器、それは笑いだ」。
この秘密兵器が私たちの脳内化学物質や、心理状態や、行動にどのような変化を起こすかをしっかりと理解することで、私たちはユーモアを戦略的に活用できるようになる。
ユーモアに関する重要なコンセプトのひとつは、地位と関係がある。
世界的に有名なコメディー劇場兼研修所〈セカンド・シティ〉で、コメディーの研修に参加した仲間であるブラッド・ビターリー、モーリス・シュバイツァー、アリソン・ウッド・ブルックスが行ったある研究では、実験の参加者たちに対し、「ヴィジット・スイス」という架空の旅行会社の「お客様の声」として、スイス旅行の短い感想コメントを書いて、発表するよう求めた。
参加者たちには伏せられていたのだが、じつは、コメントを読み上げた最初のふたりは参加者ではなく、研究助手だった。
彼らが事前に用意しておいたコメントの半分は真面目で、半分はユーモアがあった(たとえば、真面目なコメントは「山でのスキーやハイキングは最高です。本当にすばらしい!」。いっぽう、ユーモアのあるコメントは「山でのスキーやハイキングは最高だし、あのスイス国旗も気分が上がる!」)……。