アマゾンが人事で「変わり者」を推奨する納得理由

アマゾンが社員に「変わり者」になることを奨励する理由とは?(写真:LustreArt/PIXTA)
1995年に創業し、時価総額世界一にもなった巨大企業アマゾン。特筆すべきは、同社は今も驚異の成長を続けていることだが、その原動力は画期的なサービスや技術力ではなく、ジェフ・ベゾスたちが試行錯誤の末にたどり着いた人事制度である。優秀な人材を雇い入れ、最大限にパフォーマンスを発揮させることで、持続的な成長を可能にしている。その人事制度ができあがっていくのをアマゾン内部で体験した佐藤将之氏の新著『amazonのすごい人事戦略:最強組織の採用・育成・評価』から、アマゾンが社員に「変わり者」になることを奨励している、その納得の理由を紹介する。

いちばんよく使われる口癖「Think Big」

アマゾンにはOLP(Our Leadership Prinsiples)という14項目からなるリーダーシップ理念があります。「Learn and Curious(学び、そして興味を持つ)」「Dive Deep(より深く考える)」「Insist on the Highest Standards(つねに高い目標を掲げる)」など、これらはアマゾニアン(アマゾンの社員)たちが口癖のようにしている言葉です。リーダーシップ理念とは、経営者や管理職の理念というわけではなく、アマゾニアン全員がリーダーシップを持って働くための行動指針なのです。

『amazonのすごい人事戦略:最強組織の採用・育成・評価』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

そのOLPの中でも「Think Big(広い視野で考える)」は、いちばんよく使われるかもしれません。いま自分がいる世界の中だけで判断せず、視座を高くしてものごとを考えなさいということです。

自分では気づかないうちに近視眼的になって、目の前のことしか見えなくなることもあるかもしれません。そんなとき、「もっと世界を広く見て、その中で自分がどうあるべきかを考えていくことが必要じゃないの?」と言っているのがThink Bigです。

Think Bigはいろいろなプロジェクトを始めるにあたり、「Think Bigが足りないんじゃない?」「もうちょっとThink Bigしたほうがいいんじゃない?」という感じで、よく出てくる言葉でもあります。

アマゾンは毎年20%の成長をしている会社ですから、3年たてば会社は倍の規模になる。10倍になるまでに、それほど時間はかからない。たとえ現在はあるビジネスが1日100という単位でしか動いていなくても、少なくとも3年後には倍になる。その何年後かには10倍になる。

だから100ならこなせるけれど、1000という数字に対応できないようなものをつくってしまうと、あっという間に対応できなくなる日がすぐに来てしまう。日本は経済成長しなくなって久しいので想像しにくいですが、アマゾンではこういうことがよく起きます。

だからつねに10倍になったとき、100倍になったときのことを考えなければいけない。これがThink Bigの例として、よく語られることです。

「ここまで大きくなるとは想定していませんでした」という言葉は、アマゾンでは基本的にあってはならない。大きくなることを前提に考えているかどうかが、このThink Bigという言葉につながってきます。

社員に「Peculiar」を推奨

この「Think Big」を実行すると、場合によっては「この人おかしいんじゃないの?」と思われることもあります。奇想天外な話をしたり、ほかの人が想像しないようなことを想像するわけですから、当然かもしれません。しかし人にどう思われようと、自分が信じた方法で結果を出すことのほうが大事に決まっている。