どんな部下にも「最適な仕事」を振るための管理術

それを判別するためのツールが9BOX(ナインボックス)です。

9BOXは、モチベーションとスキルの2軸のマトリックスです。横軸にモチベーション(やる気)を高中低で3分割し、縦軸にスキル(スキル、コンピタンス、能力)を高中低で3分割し、合計で9分割された図を準備します。9つの象限=箱(BOX)なので9BOXと呼んでいます。

この図を使って、上司とメンバーが、業務ごとに9BOXのどこに当てはまるのか確認するのです。

画像:『1000人のエリートを育てた 爆伸びマネジメント』<P.177>

使い方はカンタン。たとえば、メンバーが担当する主要業務について、上司とメンバーそれぞれが、9BOXのどこに該当するのか事前に考え、持ち寄ります。

そして、上司、メンバーが同時に9BOXの該当するBOXを指で示します。上司とメンバーが同じBOXを指させば、ミッションに対する認識が同じであることが分かります。BOXが異なる場合は、認識の差を確認し、すり合わせていきます。

すり合わせる際に、一般的には、モチベーションの軸はメンバー本人の意見を、必要なスキルの軸は上司の意見を優先すると合意がとりやすいと思います。特にスキル軸については前述した30MRで、該当業務に対してできるかどうかがおおよそ分かっているので、それを参考すれば良いわけです。

過不足のない最適な任せ方とは

合意した9BOXにより、適切なマネジメントスタイルが次のように分かります。

やる気を示す横軸が「高」で、その実行に必要な能力を示す縦軸が「低」の場合、「指示」。

実行に必要な能力を示す縦軸が「中」であれば、横軸にかかわらず「コーチ」。

縦軸が「高」で横軸は「低」「中」の場合は、「援助」が望ましいのです。

両軸とも「高」を示す場合、つまり本人にやる気もあり、必要な能力・経験も持っている場合は「委任」が最適です。

もちろん委任する前に30MRをし、良いと思ったのに成果を出してくれないケースもあります。その場合は、そのメンバーにどうしようとしているのかを確認すると良いでしょう。そこで前向きな発言ができれば、まだ任せることもあります。環境や外部を理由にする場合は、マネジメントスタイルをコーチや援助、あるいは指示に変更します。それで無理な場合は、担当変更も考えると良いでしょう。

「委任」の場合、上司は事前にゴールとOBライン(やってはいけないこと)を明確にし、それ以外は見守ることがポイントです。

「委任」の際に誤解が多いのは、委任する側が丸投げしてしまうこと。また委任される側も、委任されたのだからと一切報告をしないで手前勝手にできるという誤解です。

これらのコミュニケーションの齟齬により、後々問題が起きることが散見されます。

では、正しい委任は、どうすればよいでしょうか。

委任する側は、①ゲームのルール(やって欲しいこと)、②OB(やってはいけないこと)、③報告内容、手法、頻度をすり合わせます。

たとえば、委任をゴルフにたとえると、穴にボールを入れる打数を最小にするのがゲームで勝つルールです。そして、OBラインを超えてはいけないなど、やってはいけないことがあります。加えて、ゲームボードを見れば、いつでも状況を把握することができます。これが報告の決まりごとです。そして、委任される側も、きちんと報告をすれば良いのです。そうすればコミュニケーションの齟齬は起きません。

やる気「低」&スキル「低or中」の場合は…

『1000人のエリートを育てた 爆伸びマネジメント』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ちなみに、やる気も低く、必要なスキルを持っていない一番下の左端と左から2つの場合、この業務をその部下に付与するかどうか再検討が必要になります。

業務を与えても、できないことが目に見えています。問題の先延ばしになる可能性が高いのです。勇気を持って、担当を変えることを検討したほうが良いでしょう。