企業が早期希望退職を募集する動きが広がっています。昨年、上場企業80社が計18635人の早期希望退職を募集しました(この他に募集人数が判明していない企業が13社。東京商工リサーチ調べ)。
今年は、昨年を上回るハイペースで早期希望退職の募集が行われています。もちろん、新型コロナの影響で業績・財務体質が悪化したことに対応した措置です。
いま当り前のように「経営が厳しい」→「よし、社員を減らそう」という流れになっていますが、社員が減ってさらに戦力が低下してしまっては、元も子もありません。これだけ大規模な早期希望退職が行われるのは、経営者・人事部門から見て「会社にいて欲しくない」「いなくなってもまったく困らない」という社員が相当数いることを意味します。
今回、企業の経営者や人事部門の責任者・担当者35名に「企業にとって一番お荷物な社員」についてヒアリングをしました。その調査結果から、お荷物な社員の特徴を考えてみましょう。
まず、最初に意外だったのは、ほぼすべての回答者が社員の「年齢」を問題にしていなかったことです。
世間では、給与水準が高い割にパフォーマンスが低い高齢社員が“働かないオジサン”と揶揄されています。また、最近の早期希望退職の募集では、「45歳以上の社員が対象」といった年齢制限を付けるのが一般的です。しかし、今回「年齢は関係ない」という意見が寄せられました。
「本当はパフォーマンスの悪い社員を指名解雇したいのですが、(日本では、ほぼ)不可能。何らかの基準を設けて早期退職を募集するなら、年齢ということになります。当社は50歳以上の構成比が高いので50歳で区切って早期希望退職を募集しましたが、別に50歳以上が他の年齢層と比べてパフォーマンスが低いというわけではありません」(素材)
「世間と同じように、給与水準が高い高齢社員を対象に早期希望退職を募集しました。ただ、年齢に関係なく、我々が『是非とも辞めて欲しい』と思う社員はいます。大して仕事ができない人事部の若手が高齢社員を“働かないオジサン”とか揶揄しているのを見ると、『本当は君たちに辞めて欲しいんだよ』と言ってやりたくなりますね」(電機)
では、経営者や人事部門が「年齢に関係なく辞めて欲しい」という社員には、どういう特徴があるのでしょうか。自由回答なので実に様々な意見がありましたが、やはり大半が指摘していたのは、職務遂行能力やパフォーマンスの低さです。
「期待するパフォーマンスを出せない社員には、即刻辞めて欲しいですね。会社の経営も厳しくなっており、ぶら下がり社員を雇い続ける余裕はありません」(金融)
「世間では報酬との対比でパフォーマンスや能力の高低を見ているようですが、報酬は組合や世間相場など本人と無関係に決まる部分が大きく、当社ではさほど意識していません。それよりも、会社の期待に応えているか、常に能力向上に努めているか、といった点に注目しています」(小売)
仕事ができない社員には辞めて欲しいというのは、経営者の目線では至って当然のこと。それ以外にどういう特徴があるのでしょうか。意見が多かった順に紹介しましょう。
1.能力やパフォーマンスが低いことへの自覚がない
「ダメな社員は、自分に何が求められているのか、求められている水準に達しているのか、自分のどこを直せば良いのか、という自省が根本的に足りません」(輸送機)
「仕事ができる社員には、入社した頃から優秀で何でもできちゃうというタイプもいますが、経験を積んで段階的に良くなっていくということがあります。一方、仕事ができない社員は、せっかく経験を積んでも、教育訓練を受けても、能力・スキルがなかなか上がりません。自分の能力やパフォーマンスが低いという自覚がないから、そういう残念な状態がずっと続いてしまうんでしょうね」(サービス)