「ソーシャルキュー(社会的合図)」と言われるボディランゲージのサインなどが、オンライン上では読み取りづらいことや、ちょっとした声のずれなどがストレスの原因とされています。画面上の限られた情報量で必死に相手を理解しようとするので、脳が疲弊してしまうというわけです。
対面ではそれほど気にならない間や沈黙も、リモートでは大きな支障になります。ドイツの研究によれば、「たった1.2秒返事が遅れただけ」で、その人に対する好感度が下がったのだそうです。また、顔を出した場合、画面上で「常に見られている」という感覚も、疲弊感につながります。
ウェブ上でのコミュニケーションは、対面に比べて「25%話す量が減る」という調査もあります。
一時盛り上がったオンライン飲みも、「声が重なり、煩わしい」「話したいことが話せない」などの理由で、やめてしまった人も多いのではないでしょうか。オンラインで関係性を深めるのは、やはり容易ではないということです。
リモートが常態化していくなか、無機質になりがちなオンラインでも心のつながりを作っていくにはどうしたらいいでしょうか。
「全身の五感」で感じ取っていた情報を、「目」と「耳」だけで吸収しなければならないオンライン環境でのコミュニケーションは、次の「3つのポイント」に気をつけてみましょう。
対面・非対面にかかわらず、コミュニケーションにおいて、「視線を交わす」というのは大きな役割を果たしています。「見つめ合う人の脳は同期する」ことが研究でわかっており、「目線を合わせること」で心理的距離が縮まるのです。
リモートでしっかりとアイコンタクトを交わすためには、カメラの位置を「自分の目線の高さ」に合わせて、しっかりとカメラを見て話すことが大切です。
注意しなければならないのは、画面上に映る相手の顔とカメラが離れている場合、画面上の相手を見てしまうと、カメラの位置とずれてしまい、あなたが視線をそらしているように見えてしまいます。
パソコンの角度や高さ、相手の顔を映し出す位置などを調整しながら、なるべく視線が合わせられるようにしてみましょう。
ウェブ会議で「顔を見せるべきか、見せないか」というご相談をよく受けるのですが、「時と場合に応じて」とお答えしています。
つねに顔出しということですと疲弊してしまう一方で、顔を見せないままだと、つながりにくいときもあります。目的に応じて、臨機応変に使い分けていく必要があるということです
メールやウェブ会議ばかりが多用されていますが、実は「シンプルな電話での会話のほうが、メールなどと比べて関係性は深まる」という研究結果が明らかになっています。
「迷惑になるのでは」との遠慮から電話をせずに、メールをする人が多い一方で、電話での会話のほうが「関係性が強まった」と感じた人が多かったそうです。これは知らない人同士の会話でも同じ結果でした。
「電話での会話のほうが、ウェブ会議より正確に伝わりやすかった」という調査もあります。事務的な連絡ではウェブ会議やメールで済ませることが便利でも、「目線」や「声」を密に交わすことで、精神的つながりが深まるということなのです。
3つ目は、「オンライン上でのアクションは、リアルよりも『ちょっとオーバー』にすること」です。
「オンライン上では表情やジェスチャーなどが見えにくく、相手の反応が読めないのでつらい」という声をよく耳にします。
日本人はそもそも、コミュニケーションのリアクションが控えめなので、オンラインではなおさら、相手が何を考えているのかまったくわからない、と孤独感を感じる人も多いようです。