仕事のできない人は根拠が何かをわかってない

確かに、それだけでも相応の説得力がつくことになろう。とはいえ、このレベルで止まってしまうと、さらに思考を進めることはできなくなりそうだ。では、どうすればよいのか? 演習問題を例に考えてみたい。

「1人2万円」と数字が示されることで具体性はあがりますが、その数字がよいのか悪いのかがわからないという点に工夫の余地が残っています。
ほかの候補地との比較において安いということを示す、予算内に入っているといった基準を示す、などといった工夫がされるとより説得力が増してきます。
定量的な情報は、その数字だけでは判断できません。定量的な情報を示す際には、数値そのものとその数字を評価するための情報もそろえましょう。(12ページより)
(出典:『入社1年目から差がつくロジカル・シンキング練習帳』)

また、B:「前職の同僚と行ったことがある」も、さらに具体化できるだろう。

「前職の同僚」を引き合いに出すことで伝えたいのは、「新しい部門での合宿として適切だ」ということ。そのため、さらには「前職は同業種だった」というようなことを添えられれば、聞き手の安心感が増す。

同僚や前の部署についても、人員構成に現在の部署と似た部分があるなどの情報が加われば説得力は大きくなるはずだ。つまり、類似点を訴求することが意味を持つということだ。

「行ったことがある」については、「いつ」行ったかがポイント。すなわち「10年前なのか」「3年前なのか」、どちらがよいかということ。最近のことであるということが示せれば、より強さが増すのだ。

このように「状況の提示」については、対象そのものがどれだけ似ているか(対象の類似性)、時間軸としてどれだけ最近のものなのか(時間の近接性)といった視点で具体化を考えていく必要があるということになります。(13ページより)
(出典:『入社1年目から差がつくロジカル・シンキング練習帳』)

思考を細分化するためには労力が必要とされ、もちろん難しいことでもある。そのため、「なんとなくこんな感じ」というレベルにとどまってしまいがちだ。例えばこのケースで言えば、「具体化できるといいよね」で終わらせてしまうことにもなりかねないということだ。

しかし大切なのは、そこからもう一歩踏み出して具体的に考えること。それが説得力を生み出し、思考力を鍛えることにもなるからだ。だからこそグロービスは、「考えがまとまったレベルからもう一歩、二歩深めて考えるという姿勢を持っておくべき」だと主張している。

“当たり前”だがビジネスの武器に

ここでご紹介したことは、あくまで基本にすぎない。だが、こうして考えてみると、ロジカル・シンキングは決して難しいことではないということがわかるのではないだろうか?

ある意味においては“当たり前の考え方”であるが、しかし、つい怠ってしまいがちなことでもあるのかもしれない。だとすれば、論理的に考える習慣をしっかりと身に付けることができれば、当然ながらそれはビジネスにおける大きな武器となっていくだろう。