コロナショックの影響が世界中で依然深刻な中、アメリカ、中国のメガテック企業は各社とも、デジタルテクノロジーを活用した新型コロナウイルス対策を実施しています。
アメリカのグーグルは、ユーザーの位置情報を利用して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から人々の移動がどのように変化したかを視覚化した「COVID-19 コミュニティモビリティレポート」を作成、当局のCOVID-19関連の政策立案にも役立てています。また、アップルとの協力によって、新型コロナウイルス感染者との濃厚接触の可能性を検出するスマートフォンのテクノロジーを開発しています。
一方、中国のアリババは、新型コロナウイルスのAI診断システムを開発、同ウイルス患者の診断済レントゲンデータをAIに学習させて、患者の胸部をCTスキャンすることで、新型コロナウイルスの症状を診断することを可能にしました。中国政府から「AI×医療」事業を受託するテンセントも、オンライン健康診断や新型コロナウイルス症状のAIセルフチェッカーなどを提供しています。
アメリカ、中国ともに、コロナショックを契機として、デジタルテクノロジーの社会実装が促進されています。
日本でも、新型コロナウイルス対策として、リモートワークが推奨され、オンライン診療やオンライン授業も普及してきています。もっとも、そこで使用されるビデオ会議ツールは、「Google Meet」「Microsoft Teams」「Zoom」といったアメリカのテクノロジー企業が提供するものがほとんどとなっています。
私たちがコロナショックに対峙して、今求められていることは、まずは新型コロナウイルス感染拡大の防止、そして経済活動を維持すること、それらの両立です。
加えて重要であるのは、アメリカ、中国でデジタル化が進む中で、日本もこれを機会に、政府が推進する「Society5.0」の実現に向けて、デジタル化をさらに進化させていくことです。拙著『2025年のデジタル資本主義:「データの時代」から「プライバシーの時代」へ』でも詳しく解説していますが、本稿では、そのための重要な条件を提示します。
Society5.0とは何か。それは、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されたものです。人間中心の社会を経済的発展と社会的課題の解決が両立するものにし、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができる社会のこと。狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、新たな社会を指すものでもあります。
具体的にはどのような社会なのでしょうか。内閣府はこう説明しています。
「これまでの情報社会(Society4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。人が行う能力に限界があるため、あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担だったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約があったりしました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対しさまざまな制約があり、十分に対応することが困難でした。
Society5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)ですべての人とモノがつながり、さまざまな知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。