今、街の中から多くの店舗が姿を消している。日本では2000年以降、大手百貨店の閉店が続いており、近年では三越伊勢丹ホールディングスの店舗が相次いで閉店を決めた。さらに2019年には大手アパレル会社のオンワードが、国内外で全体の約2割に相当する600店舗を閉鎖することがニュースになり、大きな衝撃を与えた。
すでに地方の商店街では「シャッター通り」が珍しくなくなっているが、大型百貨店や有名アパレル店のほか、今は賑わっているショッピングモールであっても安泰ではない。
アメリカでも、大型ショッピングモールが次々に閉店に追い込まれており、UBSが2019年4月に発表したレポートでは、2026年までにアメリカ国内で7万5000店もの小売店が閉店すると予測されているのだ。同レポートによれば、閉店する店の種類で見てみると、とくに影響が大きいのが衣料品店で、同期間で2万1000店が閉鎖の憂き目に遭うと見られている。
「アメリカの今を見れば日本の10年後がわかる」と言われるが、日本でも現実世界の店舗が消えていく流れは避けられそうにない。
一方、勢力を拡大しているのがネットショッピングである。楽天、Amazon、ZOZOTOWN、メルカリ……など、何かしら一度は使ったことがあるはずだ。
拙著『2025年、人は「買い物」をしなくなる』でも詳しく解説しているが、人々が「モノを買う」行動は、この数年で劇的に変化している。ここでは、なぜ人々は店舗での「買い物」から離れつつあるのか、そしてこれからの「買い物」はどうなっていくのかを解説したい。
消費者が店舗における「買い物」から離れているといっても、もちろん、お金を支払って何かを買うことがなくなるわけではない。なくなるのは、これまでの買い物におけるさまざまな「プロセス」だ。
買い物にはさまざまなプロセスがある。まず、店に行かないといけない。そのための身支度も整えないといけない。店に着いたら今度は売り場を探し、その売り場の中から、自分が求めているものを選ぶ必要がある。品質や機能をチェックしたり、値段を見たりと、比較検討することはいろいろある。買うものが決まったらレジの列に並び、財布を取り出してようやく支払いを済ませる。買った商品を家に持ち帰るまでも買い物だ。
モノを買うためのプロセスを分解すると、買い物とは、そうした面倒なことの積み重ねだということがわかる。
もちろん、反論も考えられるだろう。
「週末に家族みんなでショッピングに出かけるけれど、『面倒』というよりは楽しいイベントだ」「好きな服をたくさん見るのが好きだから、買い物はまったく苦じゃない」
こうした意見もきっとあるはずだ。しかしそれは、「買い物のプロセスの中の一部分」が好きだと言っていることがほとんどだろう。
家族と出かけるショッピングは確かに楽しいかもしれないが、帰りには渋滞に巻き込まれるかもしれない。服を見る楽しみがあるにしても、それ以外のプロセスは面倒なことが多いだろう。いい服が見つかったとしても、サイズがなくて取り寄せて、また別の日に店に取りに行くなどの時間や手間がかかることもある。
こうした買い物の煩わしさを大幅に解消してくれたのが、ネットショッピングだ。皆さんの中には、もはや「ネットショッピングなしの生活は考えられない」というほど身近になっている人もいるだろう。
ネットショッピングは、買い物の中で最も面倒な「店に行く」というプロセスを省略してくれた。ほかにも、決済が簡略化され、値段や機能の比較もしやすくなったなど、それまでのショッピングと比べると革新的な要素は多い。ネットショッピングは、業界では「Eコマース(電子商取引)」あるいは略して「EC」と呼ばれるが、ECの市場規模やEC化率の数値は年々右肩上がりで、今後もこの流れがそのまま進むことは明白である。