イラン側としてはイスラエルの報復に加担している米軍を攻撃するのは十分に理屈が立つが、やはり、イランと相性の悪い次期トランプ政権の事を慮って自制しているのであろう。しかし、国内に武装した親イラン勢力が割拠している一方でイスラエルが自国領空を対イラン攻撃に利用している状況下では、イラク政府が、拡大しつつある中東の紛争に自国がいつ何時巻き込まれるか分からないと恐れるのは十分に理解出来る。
さらに、上記の記事が示唆するように、イラク政府に国内の親イラン代理勢力を取り締まらせるために次期トランプ政権が対イラク制裁を行うとすれば、弱体なイラク政府が親イラン代理勢力を取り締まれる訳がないので「泣きっ面に蜂」となろう。武力行使を忌避する傾向の強いトランプ次期大統領が、米軍を攻撃する親イラン代理勢力を米軍に掃討させるより経済制裁を選択する可能は高そうだ。
ただ、この記事が懸念する程には中東の紛争がイラクに拡大するとはあまり考えられない。何故ならば、フセイン政権時代の昔と違って、イラク自体がイスラエルに対する脅威であるわけではなく、イランを弱体化させればイラクの親イラン民兵もそれに従って衰退するだろうと考えるのが妥当だからである。