＜イスラエルによるイラン核施設攻撃の可能性＞報復攻撃が見せた重大なインパクト

　Economist誌11月２日号が、10月26日の対イラン攻撃によって、イスラエルはイランの防空能力とミサイル製造インフラに甚大な損害を与えることに成功し、それによって、イランの核施設をいずれ時期が来れば爆撃するオプションへの道を開いたように見えるとの解説記事を掲載している。要旨は次の通り。

（e-crow/gettyimages）

　10月１日にイランが181発の弾道ミサイルをイスラエルに発射した時、ネタニヤフと少なくとも何人かの将軍はイスラエル空軍が何十年もの間訓練して来たことを実行するチャンスを見出した。それはイランの核施設の爆撃である。

　10月26日、東に向かったイスラエル空軍の100機の編隊は軍事施設だけを攻撃したが、そうすることによって、彼らはイランの軍事能力を除去し、将来におけるより野心的な攻撃への道を開いたのかも知れない。

　イランはロシア製のS-300対空ミサイル・システム４個を長らく運用して来た。イランによる前回のミサイル攻撃に対して、４月、イスラエルは目標追尾レーダーを破壊することによってそのうちの１個を無力化した。

　イスラエル筋は、残りの３個は今回の攻撃で除去されたことを示唆している。イスラエルは西部国境イラームのイラン製長距離レーダー「Ghadir」も攻撃したようだ。

　10月26日の攻撃にはイラン空域に侵入するためにF-35ステルス戦闘機が何機か使われた。多数の非ステルスのF-15とF-16戦闘機がイラク空域から長距離弾道ミサイルを発射した。

　イランの地下深くにある核施設の攻撃には目標により近接した場所から投下される遥かに多量の爆弾が必要となる。しかし、これが今や容易になった。イランには他にも防空システムがあるが、それらは性能が落ち、短距離のシステムである。

　イスラエルは、イランの防空システムを叩き潰すとともに、イランのドローン・ミサイル製造施設に深刻な損害を与えた。

　こうした状況は４月から10月までにイランが費消した300少々の弾道ミサイルを補充することを困難にする。また、ヒズボラのような同盟勢力へのミサイルの補給、そして、ウクライナでの使用のためにイランのミサイルに頼っているロシアへの補給を複雑化するであろう。

　イスラエルのミサイルはTaleghan2として知られる建物を攻撃したようである。この建物には、20年少々前、当時活発だった核兵器計画で使われていた爆薬圧縮室があったと考えられている。

　この場所は８年間休眠状態だった。そこをイスラエルが爆撃したということは、他の核施設に対する脅かしと解釈する他ない。

　イスラエルはイランの核施設に対する本格的な攻撃には米国の支援を必要とするであろう。イスラエルは米国の支援を得られるかも知れない。イスラエル筋によれば、米国の中央軍は今回の攻撃の立案に当たりイスラエルと例外的に緊密に作業したとのことである。

　10月４日、トランプはイスラエルに核施設を狙うよう奨励した。11月５日にトランプが再選されれば、ネタニヤフはそのような攻撃のための機は熟したと決定するかも知れない。イランにとって、それをやり過ごすことは今や以前に比して遥かに困難であろう。

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イスラエルが狙っていたもの

　10月26日のイスラエルのイランに対する報復攻撃は、防空能力とミサイル製造インフラの破壊を狙った精密で計算された攻撃であったようである。戦闘機を中心とする３波の攻撃で約20カ所を攻撃したらしい。ガラント国防相（当時）は1967年の六日間戦争以来最も重要な空軍の作戦だったと述べているが、この記事は攻撃が重大なインパクトを持つ所以を説明している。