〈インターネット時代の書店の生き残り策〉オンライン書店との“共存”から図書館とのハイブリッド戦略まで

2024.10.30 Wedge ONLINE

 相対的に、街の図書館の役割において教養、レクリエーションのウェイトが高まってくる。例えば、子ども向けの「読み聞かせ」、大人向けなら一般書や雑誌閲覧の充実が現在に増して求められよう。

インターネット時代の書店の生き残り策

 今後、ネット通販やスマホ・タブレット操作に抵抗のない50歳代が高齢層に繰り上がるに従って、オンライン書店や電子書籍の普及率はますます高まっていくだろう。リアル書店はどのような生き残り策を講じればよいだろうか。

 リアル書店の強みは、新たな本との偶然の出会いである。「目的買い」の対義語は「衝動買い」だが、この両極端の間にも購買動機がある。

 目的買いこそオンライン書店に分があるが、衝動買いはもちろん、衝動買いと目的買いの中間の購買動機にもリアル書店の強みがある。オンライン書店は既知の興味関心を深めてくれるが、リアル書店は未知の興味関心を発見し、拡大してくれる。こうした強みを活かし、近年は、テーマ別の書棚構成をこしらえるなど本との出会いを重視した書店が見られる。

 本に囲まれた空間でゆったりとした時間を過ごすのもリアル書店の楽しみだ。カフェを併設したり、ソファを置いたりと立ち読み(正確には座り読み)を促す、いわば滞在型の書店は大型書店を中心に90年代頃からあった。これも、オンライン書店にリアル書店が対抗する作戦のひとつである。

 こうしたリアルの強みを活かした書店の先端事例といえば、22年9月に福井県敦賀市のJR敦賀駅前に開業した公設民営書店の「ちえなみき」がある。「新たな学び及び価値を創造するとともに、くつろぎ及び憩いの場」をコンセプトとする敦賀市の「知育・啓発施設」だ。新刊だけでなく絶版本や洋書、古書も含む3万冊超を、本の目利きのプロである丸善雄松堂と編集工学研究所が「文脈棚」と呼ばれる本のテーマや内容に沿って並べており、新たな書籍との出会いを創出している。

 ただ、オンライン書店にはない強みを活かしたリアル書店の集客が増えても、購入の段になってオンライン書店、電子書籍を選択されてはたまらない。集客をこぼさずいかに売上につなげるか、リアル書店の強みにフリーライドさせないことだ。

自社オンライン書店への誘導を

 そのためには、リアル書店が独自のオンライン書店を立ち上げることだ。大手書店の通販サイトは既にあるが、その使い勝手をオンライン書店の専業サイトに揃えることがポイントだ。

 オンライン専業書店の強みは、購入ボタンのクリック1つで購入が成立し支払いが完了すること、電子版を選択すればダウンロードできることなどがある。過去に遡って領収証を出力できる機能も確定申告する人にとっては重要なポイントだ。

 リアル書店で見つけた本は、リアル書店のオンライン書店で購入するようにする。あるいは電子版をダウンロードするようにする。利便性がオンライン専業書店に劣らなければ、立ち読みした本はリアル書店のオンライン書店から買う動機がはたらくだろう。

 また、リアル書店にあればよいと思う機能が店頭在庫の店舗間の融通だ。筆者の経験だが、オンライン書店で品切れだったので、全国に店舗網を持つ大型書店の在庫検索をしたところ、遠方の支店で目的の本がヒットした。注文し、行きつけの店舗で受け取りたかったが対応不可だった。

 そこで直接支店に電話をし、本と同じくらいの手数料を払って代金引換便で送ってもらうことになった。遠方の支店の店頭在庫をクリック一つで購入し、最寄りの店舗で受け取り、キャッシュレス決済することができればオンライン書店に対抗できるのではないか。

図書館で読み、書店で買う

 もう一つは、図書館と書店のハイブリッド戦略である。図書館で本を見つけ、書店で買う補完関係の構築がねらいである。