岡田氏は監督に就任すると、レギュラー野手を固定するなど、選手たちの適性を見抜いた采配や起用で底上げを図り、就任1年目からリーグ優勝、日本一へと導いた。優勝という言葉を「アレ」と言い換えるなど、独特の言い回しはファンにウケた。
スポーツ紙各紙が試合後の囲み取材の内容を詳細に伝えるなど、関西では大きな影響力を持った。一方で、66歳という年齢からも長く監督は務められないことは覚悟し、自身がコーチ、2軍監督など現場を経験して1軍監督へ昇格した経験から、昨季からは球団OBの今岡真訪氏をコーチとして招聘するなど後任の育成にも着手していた。
早稲田大学からドラフト会議では当時最多となる6球団競合の末に、“相思相愛”の阪神に入団。中軸を担って1985年の日本一に貢献し、阪神の監督としても歴代最多522勝をマークした。猛虎の生え抜きとしてチーム愛の強さが際立つが、特に第2次政権では、選手やコーチのミスを厳しく断罪する直言が、時代に合わないと批判されることも目立つようになっていた。
岡田監督は、現役時代に阪神の暗黒時代を経験しているが、勝負に対しては自らも厳しい姿勢で向き合う。第1次政権だった08年も巨人に最大13ゲーム差を逆転されると、リーグ2位で6年目の続投が内定していたにもかかわらず、引責辞任した。報道によれば、今回も9月29日にV逸が決まった時点で、球団幹部と協議して退任が決まったと伝えられる。
このときに続投要請がなされず、指揮官は優勝を逃したという結果を受け止めたとの見方がもっぱらだが、在阪メディアの記事では、阪急サイドが推した岡田監督の2年契約が満了するタイミングは、阪神電鉄側が監督人事を自分たちで主導する立場を取り返すために逃してはいけない機会だったと強調されている。
次の監督就任が有力視される藤川球児氏は現役時代から人気も高く、将来の監督候補と言われてきた一人であることは間違いない。解説もわかりやすく、野球をよく知っていると高い評価を得る。コーチ経験がない点は不安要素に挙げられるが、世代交代という構図もわかりやすい。
ただ、取材をしてきた記者には、監督交代がチーム強化という視点よりも、フロント側の都合が大きく影響していた点が見透かされている。田所記者はコラムの最後を「主導権奪回のため? 常勝タイガースを作るためではないの? 岡田監督交代劇になんだか寂しい思いがした」と締めくくり、岩崎記者は最終戦で取材に応じなかった岡田監督を「今季限りで電撃勇退を余儀なくされた格好の岡田監督は終始不機嫌モード」と表現した。
スポーツニッポンの虎番キャップ、倉世古洋平記者も同様に舞台裏を解説した記事「阪神・岡田監督は『任期2年』大前提 阪急阪神HD角会長『次の監督は阪神で決める番』」の中で、「ファンからすれば、後ろ盾が阪神でも阪急でも関係ない。両者の主導権争いを生まないためにも、勝利が求められる」と思いを代弁した。
今季限りでの退任が既成事実だったとしても、日本一の可能性が残っているクライマックスシリーズへ挑む前に表面化したことは、いかがなものか。さざ波が立つ中で、阪神は12日からのCSで甲子園にDeNAを迎える。