中国電気自動車(EV)、東南アジアでの販売が急伸!日系自動車メーカー危うし
この1年というもの、こうしたニュースを目にする機会が増えた。実際、東南アジアでの中国EVの販売台数は急増している。調査会社カウンターポイント・リサーチによると、今年第1四半期の東南アジアにおけるEV販売台数は前年比で倍増し、うち7割超は中国メーカーが占めている。
中国からの輸出が増えているだけではない。中国EV最大手の比亜迪(BYD)は7月、タイ工場の稼働を発表した。タイといえば日系自動車メーカーの一大生産拠点だが、現在は中国EVメーカーの工場建設ラッシュが続く。
計画中・建設中を含めると、広州汽車集団の「AION(アイオン)」、合衆新能源汽車の「哪?汽車(NETA)」、上海汽車、長安汽車、長城汽車、奇瑞汽車と多くのメーカーがタイに生産拠点を構える。タイだけではない。インドネシア、ベトナムでも中国EVの成長が続いている。
とはいえ、現時点ではまだ日系メーカーのシェアは圧倒的だ。タイの2023年新車販売台数を見ると日系のシェアは78%、中国系は11%と大きな開きがある。コロナ前は日系が90%前後、中国系は3%弱だったので変化は大きいとはいえ、日系が強い現状は変わっていない。
問題はEVシフトと中国系の快進撃がどこまで続くかだ。新しもの好きのアーリーアダプターの需要が一巡した後も売れ続けるのか、充電インフラの不足がネックになるのでは、修理代や保険の高さが知られると敬遠されるのでは、火災リスクが深刻、リセール価格が低く資産価値の低さが問題になるのでは……。
「EVがさっぱり売れない国・日本」ではEVの弱点が繰り返し語られている。そうした意見を聞いていると、今の勢いが一時のものではないかと思うのも無理はない。
ただ、中国市場という前例は注意すべきだ。「EV成長もいつかはボトルネックにさしかかる」。世界最大の自動車市場である中国では、そうした疑いの目を跳ね返しながらEVは力強く成長を続けている。NEV化率(自動車販売台数全体に占める純バッテリー車とプラグインハイブリッド車のシェア)は18年の4.5%から爆発的に上昇し、24年7月には43.8%に達した。
車両価格は内燃車と同等以下、保守費用と燃費(電費)は圧倒的に安いというコストパフォーマンスの高さに加え、大型ディスプレイによるエンターテイメント機器や音声操作、スマートフォンからの遠隔操作、先進運転支援システム(ADAS)といった、EVとの親和性が高い機能も評価が高い。すでに「消費者が欲しい車」の座は内燃車からEVに変わった。
中国では内燃車の販売は大きく減少している。この煽りを食らって日系メーカーのシェアは最盛期からほぼ半減となる10%強にまで低下している。
ホンダが早期退職を募集、日産が生産台数を大幅削減、三菱自動車が撤退とその影響は深刻だ。21年のEV躍進元年からわずか4年で中国市場は激変した。この前例がある以上、「いくら伸びているといってもまだ少数」とは侮れない。
日本では「アーリーアダプターの購入が一巡したあたりでEV普及率は天井になる」との見立てを聞く機会が多いが、中国の自動車業界関係者では「EV普及率が閾値を超えると、そこからの急成長は止まらない」という楽観的な見方が主流だ。中国の見方が正しいという保障はないが、なにせ自国市場での成功が続いているだけに自信満々というわけだ。
東南アジアでも中国並のペースでEVシフトが続くのか。予測は難しいが、個人的には中国と同じペースで普及は進まないのではないかと見ている。