後継候補のハリス氏へトランプ陣営が警戒強める4つの理由、“形勢逆転”はあるのか?

2024.07.24 Wedge ONLINE

 バイデンからハリスへ――。党大会を終え「トランプ再選」に向けて高揚感に包まれつつあった米共和党陣営では、民主党候補が急遽、ハリス副大統領に差し替えの公算が濃厚になったことを受け、一転、警戒感が高まっている。

大統領選から撤退したバイデン大統領が後継指名したカマラ・ハリス副大統領(Chris duMond / gettyimages)

順調な滑り出しの“ハリス陣営”

 「ハリス・チームは驚くほど迅速に民主党候補として申し分のないスタートを切った。各州の民主党事務所にはやる気満々の支援者たちからの電話がひっきりなしにかかってきており、まるでロケット・スタートの感がある」。バイデン撤退の後を受け、直ちに出馬表明したばかりのカマラ・ハリス副大統領と電話で話したというマーク・ポーカン下院議員(ウィスコンシン州)は21日夜、政治メディア「The Hill」にこう語った。

 「The Hill」によると、ハリス氏はすでに、ポーカン議員のほか親しい議員の何人かに出馬の意向を伝えたほか、議会民主党の3つの要の連合組織とされる「議会進歩連合」「議会ヒスパニック連合」「新民主党連合」のそれぞれの委員長にもコンタクトし、3委員長から「全面支援」の確約をとりつけたという。

 ハリス氏が正式に民主党候補に確定するには、8月19日から始まる民主党全国大会での代議員による最終投票を待つ必要があるが、ハリス側近たちの間では、すでに本選に向けて順調な滑り出しを切ったと判断されている。

早くもトランプが口撃

 これに対し、迎え撃つトランプ陣営は警戒を強めつつある。

 バイデン氏がトランプ氏とのTV討論会で大失態を演じて以来、米マスコミ界では、「バイデン撤退不可避」とみて、民主党の代わりの有力候補として、ハリス氏のほか、グレッチェン・ホイットマー・ミシガン州知事、J.B.プリツカー・イリノイ州知事、ジョシュ・シャピロ・ペンシルベニア州知事、ギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事らに関心が集まりつつあった。

 しかし、NBCテレビが21日、流したニュース解説によると、トランプ選対本部はTV討論会直後から、ハリス氏に焦点をしぼり、ハリス副大統領の“失政ぶり”についての材料集めや、バイデン氏の代替候補となった場合の攻撃作戦について協議を重ねてきたという。

 トランプ氏自身も、共和党候補として正式指名された党大会直後の去る19日(バイデン撤退発表の前日)、ミシガン州グランドラピッズでの選挙集会で演説し、とくにハリス氏の名前を挙げて「バイデン失政の尻ぬぐい役」などと酷評している。

 トランプ氏の子息、トランプ・ジュニアも17日の党大会演説の中で、ハリス氏に言及し「彼女はバイデン以上に思想的にリベラルであり、能力的にも劣る」と批判した。

 こうした動きは、逆説的に、共和党陣営が、ハリス氏がバイデン氏より手ごわい相手であるとして警戒視していることを示すものと言えよう。

 ではなぜ、ハリス候補に対する警戒が強まりつつあるのか。おもに4つの理由が挙げられよう。

戦略の練り直し

 第一に、「老いぼれジョー(バイデン氏の蔑称)VS闘志みなぎるトランプ」の対比がもはや通用しなくなり、逆に今度は「若さと才気あふれるハリス(59歳) VS 高齢(79歳)で新鮮味のないトランプ」の対決となり、トランプ氏が不利に立たされかねない点がある。

 この点について、CNNテレビの報道によると、共和党選対本部は、トランプ氏が圧倒的に優位に立ったTV討論会後も、バイデン氏が撤退要求の逆風をはねのけ、最終的に党大会で指名されることを前提として、バイデン氏とトランプ氏との違いを浮き立たせる戦術やTV選挙広告作成にとりかかってきたことを明らかにするとともに、「今となっては選挙コマーシャルなどは一からやり直さなければならない」と語ったと伝えられている。