<トランプ支持者の対中強硬論>習近平帝国を力でねじ伏せる強硬的算段とは

2024.07.18 Wedge ONLINE

 2024年6月24日付フォーリン・ポリシー誌は、米国がとるべき対中政策について、マシュー・クローニグ大西洋評議会副会長とダン・ネグリア同「自由・繁栄センター」上級部長による論説を掲載している。

(wildpixel/gettyimages)

 中国との戦略的競争において、米国が目指すべき政策目標は何かが問われている。バイデン政権は中国との「競争を責任を持って管理する」ことを目指している。しかし、米国は中国との争いにおいて「勝利」を目指すべきである。ここで勝利とは、中国が米国の死活的利益を害する意思や能力を持たない状況を実現することである。

 単に「競争を管理」することは明らかに意味をなさない。いかなる競争も、目的は管理することではなく、勝利することだ。

 歴史上の対立関係と同様、米中の争いもいつかは終結する。その時、米国にとって一体どのような状況が望ましいのかを考えなければならない。

 中国は、現在、米国の死活的利益を活発に体系的に害する能力と意図を持っている。それには、米国のインド太平洋地域における同盟国やパートナーに対する軍事的強制、台湾に対する軍事的脅迫と侵略の威嚇、不法な貿易慣行による米国の経済的利益への侵害、米国の民主主義の侵食が含まれる。

 さらに、中国は、米国主導の国際システムを自らが中心となる新たな世界秩序で置き換えようとしている。そうした新秩序は、権威主義と習近平の帝国を目指す野望に適合したものである。

 こうした中国との新たな冷戦に勝利するためには、三つの方策がある。

 勝利への第一の方策は、経済、技術、イデオロギー、外交、軍事力の全分野において中国を完全に競争で打ち負かすことであり、それによって、中国が米国の死活的利益を害する能力を失わせることである。このためには、中国経済からのデリスキングを進め、米国の経済的・技術的指導力を強化することが必要である。

 税の軽減、規制緩和等トランプ時代の成長重視型政策を復活させるべきである。また、インド太平洋地域における同盟システムを拡大・深化させることで、勢力均衡を更に米国有利にすることができる。

 勝利への第二の方策は、中国の意図を変えさせることである。習近平の考えは決まっている。しかし、将来世代の中国の指導者は、米国とその同盟国と、より協調的な道を選ぶかもしれない。この第二の方策は、第一の方策を進めることでやりやすくなる。

 勝利への第三の方策は、中国の体制転換である。中国の体制転換が米国にとって良いのは、民主主義や人権の観点からではなく、中国が米国を脅かす能力と意図を挫くからである。

 これら三つの方策は、相互に補完的なものである。米ソ冷戦は、これらの結果の複合によって終結した。現在の中国の攻撃的姿勢は、中国の悪質な行動に対して適切なコストを課してこなかったからである。

 将来に渡って中国の脅威が減ずるようにするには、断固たる対決姿勢をとる必要がある。勝利を実現するためにはそれを構想しなければならない。米国とその同盟国は、勝利の構想を念頭に置いて、新冷戦を勝利することを目指していくべきである。

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米中冷戦と米ソ冷戦の違い

 上記は、米国の共和党系の論客であるクローニグとネグリアによる対中政策についての論考である。米国において「対中強硬」は、民主・共和両党で意見が一致する数少ない分野と言われるが、この論考は、バイデン政権の対中政策を批判しながら、共和党陣営内で自分たちの存在をアピールする狙いがあるのだろう。

 この論考の著者二人は、本年3月に『われわれは勝ち、彼らは敗れる―共和党の外交政策と新冷戦(We win, They lose: Republican Foreign Policy and the New Cold War)』という著作を上梓した。この本には「レーガン・トランプ融合」という章があり、「力による平和」をキーワードにして、トランプ外交を冷戦終結時のレーガン外交に類似したものと捉えている。