【検証、テレビ討論会】バイデン撤退のシナリオ、ハリスに任せる可能性はあるのか?副大統領候補はオバマ・ミシェル夫人か? 検証、テレビ討論会

2024.07.06 Wedge ONLINE

 加えて、オバマ元大統領は同じXの投稿で、「真実を語る人と語らない人」の戦いでもあり、後者は「自分の利益のために嘘をつく人」でもあるとして、トランプ前大統領を批判した。

 バイデン大統領と近い関係のクリス・クーンズ上院議員(民主党・東部デラウェア州)は、週末の米ABCニュースとの政治番組のインタビューの中で、バイデン氏撤退を要求した米有力紙ニューヨーク・タイムズについて、同紙の論説委員会は「間違っている」と指摘した。その上で、激戦州ペンシルベニア州のフィラデルフィア・インクワイアラー紙は、バイデン大統領に撤退を求めていないと強調した。

 バイデン-ハリス陣営も早速、テレビ討論会でトランプ大統領が嘘をついている場面を取り上げた1分間の政治広告を打った。

 上記のバイデン大統領を支持する発言や陣営の政治広告は、バイデン大統領の討論会での失敗を小さくみせるないし討論会でのバイデン氏の低調なパフォーマンスからトランプ氏の発言内容に目を向けさせるというダメージ・コントロールを行ったものである。

バイデンはどのように立て直すのか?

 では、今後バイデン大統領はどのようにして立て直すのだろうか。

 第1に、「トランプ=重罪犯」のメッセージを強化することが不可欠である。今まで、バイデン大統領は選挙と裁判は別物として扱ってきた。その意味では、裁判を「魔女狩り」や「政治的迫害」と訴えてきたトランプ前大統領と好対照である。

 テレビ討論会の10日前(6月17日)からバイデン―ハリス陣営は、新しいテレビ広告を流し、その中でトランプ前大統領を「重罪犯」と呼んだ。しかし、90分の討論会でバイデン大統領は、トランプ氏を重罪犯と呼んだのは、わずか1回であった。

 7月11日にトランプ前大統領の量刑が下される予定になっていたが、9月18日に延期された。これは、トランプ前大統領に追い風になるという見方もあるが、仮にその時点で禁固刑が出れば、ダメージになることは言うまでもない。

 第2に、バイデン大統領は討論会でトランプ前大統領を反民主主義者に描き出そうとしたが、十分ではなかった。

 そこで、バイデン氏は自身を「民主主義のリーダー」、トランプ前大統領を「権威主義的リーダー」ないし「独裁的リーダー」に明確に描く必要がある。その際、人工妊娠中絶問題を取り上げ、トランプ氏は女性の「自由の権利」や「選択の権利」を与えていないと議論することが肝要だ。これに関しては、前回の「トランプと『強いリーダー』の落とし穴」を参照して頂きたい。

 第3に、次の大統領は米連邦最高裁判事を2人ないし2人以上任命する可能性があると訴えることが欠かせない。

 現在、米連邦最高裁判事は保守派6人、リベラル派3人から構成されている。バイデン大統領が再選すれば、リベラル派5人、保守派4人に変わる。そうなれば、人工妊娠中絶の権利擁護を復活させることができる訳だ。この第3の対策は、リベラル派のみならず、無党派層の女性にもアピールできる。

 もう1点を加えると、それは人事である。バイデン大統領は、選対幹部を入れ替えることはしないだろう。トランプ前大統領とは異なり、バイデン大統領は閣僚や側近、選挙スタッフを解任しない傾向が強い。

 バイデン-ハリス選対の会長を務めるのは、2020年米大統領選挙でトランプ前大統領を破ったときの選対本部長であったジェニファー・オマリー・ディロン氏である。選対本部長は、メキシコ系のジェリー・チャベス・ロドリゲス氏、副本部長は黒人のクエンティン・ファルクス氏である。今後も同体制で臨むと考えられる。

バイデン氏に最も影響を及ぼす人物

 現時点では、民主党内に具体的な行動はないのだが、バイデン撤退のシナリオについても考えてみよう。