【サイバー攻撃常習国に囲まれる日本】中国による情報窃取が増加 現在の国家防衛に必要な「ACD」とは

2024.07.03 Wedge ONLINE

 2018年のサイバーセキュリティ戦略では、欧米と同じように、サイバー攻撃の抑止の概念も導入されている。サイバー攻撃から、安全保障上の利益を守るため、「国家を防御する力(防御力)、サイバー攻撃を抑止する力(抑止力)、サイバー空間の状況を把握する力(状況把握力)のそれぞれを高めることが重要である」との指摘がなされた。

 2018年時点のACDは、サイバー攻撃の脅威情報の迅速な共有により、事前に防護手段を講じるという情報共有の側面が強い施策であった。これに対して、2022年の安保三文書での記述では、より踏み込んだ形でのACDの実施がうたわれている。「国家安全保障戦略」では、「安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃のおそれがある場合、これを未然に排除し、また、このようなサイバー攻撃が発生した場合の被害の拡大を防止するために能動的サイバー防御を導入する」との表現が盛り込まれた。

 また、自衛隊の役割についても、「今後、おおむね10年後までに、[…]自衛隊以外へのサイバーセキュリティを支援できる態勢を強化する」との文言が「国家防衛戦略」に入り、自衛隊自身のネットワーク防衛のみならず、我が国全体のサイバー空間の防衛にも一定の役割を果たすことが示された。

 これらを受けて、具体的な「防衛力整備計画」では、2027年度を目処に、自衛隊サイバー防衛隊などのサイバー関連部隊を約4000人に拡充し、サイバー要員を約2万人体制に強化すると共に、サイバー・スレット・ハンティング(脅威追跡)機能を強化し、重要インフラ事業者および防衛産業などの民間との連携強化を行うことが記述された。

 2023年1月には、内閣官房にサイバー安全保障体制整備準備室が立ち上げられ、日本では現在、安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃について、ACDの実施が行えるよう、包括的な法整備・体制整備が進められている。