〈“右翼化”強めるアメリカ共和党〉有罪トランプも「インチキ」と主張、大統領選結果も認めない懸念も噴出

2024.06.26 Wedge ONLINE

 米国2大政党の1翼を担う共和党有力幹部たちが、不倫もみ消し裁判での前大統領「有罪判決」を受け、裁判制度そのものを一斉に糾弾、三権分立に支えられた米国民主主義に疑念を呈する過激な言動がめだっている。

トランプへ「有罪」の評決が下された後、トランプと距離を置いていた共和党員からもトランプ支持への動きがでている(ロイター/アフロ)

「裁判はインチキ」

 「判決は不当であり、裁判そのものがゆがめられている」――。米議会トップの座を占めるマイク・ジョンソン下院議長(共和)は先月30日、ニューヨーク州裁の陪審団がトランプ前大統領に「有罪」の評決を下した直後、SNSの「X」を通じトランプ氏の立場を全面擁護する以下のような声明を出した:

 「5月30日というこの日は、米国史にとって汚辱の日にほかならない。民主党は、弁護士資格をはく奪された犯罪人の証言をもとに対立政党指導者を滑稽な容疑ででっち上げ有罪にした。わが国司法システムの“武器化(weponization)”はバイデン政権の看板であり、この日の評決は、民主党が異議と政敵を沈黙させるためにいかなることでもすることを示す新たな証拠である。米国民はこの裁判を『lawfare』(法を武器とした戦争)とみなしており、間違いであることを理解している。トランプ前大統領は当然のことながら、控訴するだろうが、彼は必ずや勝つ!……有罪判決はかえって11月の選挙で彼を大統領に導くことになる」

 米マスコミは、三権分立の一翼を担い一定の見識が求められる議会最高指導者が、裁判そのものを酷評し、被告への一方的肩入れ表明したことを一斉に報じた。

 AP通信はその前日、ジョンソン議長が陪審評決に先立ちニューヨーク市マンハッタンの裁判所前に自ら姿を見せ、「裁判はインチキだ」「司法制度は腐敗している」などと語ったことも紹介している。

 下院共和党では、ジョンソン議長に相乗りし、多くの議員たちが反発、一斉にニューヨーク州裁のトランプ有罪判決を一蹴する声明や発言があいついだ。

 7人の議員からなるオクラホマ州選出下院議員団も、即日、トランプ被告支持声明を発表、「インチキ裁判の典型だ」「米国にとって暗黒の日」「米国民はニューヨーク民主党が介入したこの裁判を決して許さないだろう」などと糾弾した。 

トランプを支持し始めた共和党たち

 また、これまでトランプ氏同様の過激な動きを見せる下院共和党とは一定の距離を置いてきた上院共和党議員団の間でも、トランプ支持の動きが出始めている。

 共和党上院トップのミッチ・マコーネル院内総務はその代表格だ。

 マコーネル議員は、トランプ政権末期の 2021年1月6日、米政界を揺るがした連邦議事堂襲撃・占拠事件について、「トランプに直接の責任がある」と同氏を批判して以来、没交渉となり、その後も、ウクライナ情勢めぐり、支援に消極的なトランプ氏との対立は深まる一方だった。同議員の息のかかった他の上院共和党議員の中でも、“トランプ離れ”が広がった。

 ところが、大統領選共和党候補選びでトランプ氏の同党指名獲得が明白となった今月5日、マコーネル議員はこれまでの沈黙を破り、突如として、トランプ候補を支持する以下のような声明を発表、AP通信なども「驚くべき変身」だとして大きく報じた:

 「トランプ候補は、これまでの予備選を通じ、共和党候補として欠かせない有権者の十分な支持を獲得したことが明白となった。私は彼が、共和党指導者としてバイデン政権に対峙し、米国民の暮らし向上のための諸政策を推進することを楽しみにしている」

 その後、「トランプ有罪判決」について、マコーネル議員は直接論評を控えているが、他の共和党上院議員有力員の間からは「裁判はでたらめであり、トランプ候補の選挙戦を妨害するものだ」(次期院内総務候補のリック・スコット議員)、「真の裁きは11月大統領選投票日だ。トランプ候補の下に結集し、ホワイトハウスを奪回しよう」(ジョン・コーニン議員)、「最初から党派性をむき出しにした判決だ。共和党は11月選挙で復讐しよう」(ジョン・バラッソ上院共和党会議議長)などの発言が目立った。