<都知事選のニュースはもう、うんざり…?>多すぎる立候補者数、不適切なポスターを減らすシンプルな方法を示そう

2024.06.25 Wedge ONLINE

 東京都知事選で56人の立候補者が乱立し、言論を戦わせるという本来の機能が奪われている。また、都政に対する提案ではなくて、まったく関係のない主張の場にもなっている。主張の中身を規制することは言論や政治活動の自由から難しいというのだが、解決策もありそうだ。

過去最多の56人が立候補した都知事選で、同一のポスターが複数枚掲示されている(時事)

 知事選に立候補するための供託金を高くすれば良い。つまり問題をお金で解決するのである。金で解決すると言えば嫌われるが、金で解決しないと無限に面倒なことが起きる。言論や政治活動の自由を制限しないで立候補を制限するのは難しいからだ。

 供託金は、選挙を利用した売名行為を防ぐ目的として、公職選挙法により設けられている。知事選の場合は1候補者につき300万円をあらかじめ供託し、得票が有効投票数の1割未満であれば供託金は没収され、都に納められる。

 前回の都知事選では、立候補者22人のうち19人が没収の対象となった。今回も多くの候補者が供託金の没収となる可能性が高いが、それでも立候補が増えたのは街頭演説や政見放送、選挙ポスターの掲示によって得られる候補者や団体の宣伝効果が300万円を支払う以上にあると判断されてのことである。

 そもそも人口100万の県でも1400万の東京都でも同じ供託金であることに矛盾がある。人口が10倍大きければ公費で支援する選挙活動のための費用もほぼ10倍になる。立候補することによる認知度の上昇もそれに準ずる。

 都道府県の人口順位で丁度真ん中24位の鹿児島県の人口は約160万人である。ここを標準の300万円とすれば、東京都の人口約1400万人は鹿児島県の人口の8.75倍だから、東京都の供託金は300万×8.75=2625万円なので、2600万円とすることが適切なのではないだろうか。

言論の自由には反しない

 それは言論の自由に反するという反論があるかもしれない。ただ、言論の自由とは、自分の意見を発表することによって逮捕されたり拘禁されたりすることがないという自由である。個人の意見を発表するコストを政府や自治体が援助しなければならないという訳ではない。

 大学の立て看板の中身がよほど反社会的なものでないかぎり、大学は規制していないだろうが、立て看板の費用は意見を表明したい学生が負担している。選挙のように立て看板を政府や自治体が提供しているわけではない。

 看板を置くキャンパスの地代は徴取していないが、通行の邪魔にならないなら、構わないという程度の判断でしていることだろう。あまりに多すぎれば別の判断が出てくるかもしれない。

 また、2600万円の供託金では、政治参加のハードルを高くするという反論もあるだろうが、2600人を説得して1人1万円の寄付を得た、260人を説得して1人10万円の寄付を得た、あるいは自分のお金2600万円を使っても都民のためにやりたいことがあるという人だから、とりあえず発言を聞いてみようかとなる訳で、でなければ面倒だと選挙民が考えても良いのではないか。2600万円なら、税金を投入される選挙準備のコストのある程度のものが自己負担となるだろう。

 今回の都知事選の掲示板の設置個所は、1万4000カ所という。ポスター掲示板は、1カ所10万はかかるだろうからこれだけで14億円である。56人の立候補で割れば2500万円だから、掲示板の費用だけは回収できる。

 もちろん、供託金は、選挙の公的費用を削減するためではなく、売名や泡沫候補の乱立を避けるためが本来の目的であるだろうが、高い供託金はこのためにも有効である。