健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

小太りがもっとも長生きする――医者が明かすダイエットの不都合な真実

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普通体重が一番長生きできるわけではない

前述した通り、BMIは肥満を見つけるために作り出された数値ですから、普通体重だから長生きできるということではありません。
40~59歳の男女4万人を10年間にわたって追跡した調査では、BMIが23~24.5のやや肥満が最も死亡率が低かったという結果が出ています。逆に、BMI14~18.9のやせ体型は死亡率が基準値にある人に比べ、1.94倍高かったという結果になっています。

さらに最近の調査では、BMIが問題ではなく、その変化の仕方に重要な意味があることがわかってきました。 
どの世代においても、普通体重だった人が年齢を追って太り気味(肥満にまではいかない程度)になった時に、もっとも長生きする可能性が高いことが判明したのです。つまり、歳とともに、多少肥満気味くらいなるのが長生きのコツということになります。なお、次に長生きだったのは、ずっと普通体重を維持した人でした。
普通体重を維持することは重要ですが、長生きという視点なら、多少の肥満傾向になっていくほうがいいのです。

太るのを防ぐのはどうしたらいいか

とはいえ、やはり太りすぎてしまうのはよくありません。そこで、太ってしまうメカニズムについても考えてみましょう。

おいしい物を食べると幸福な気持ちになりますし、イライラした時など、何かおいしいものを食べたいなと思うことが多いものです。
これはおいしいものを食べたときに、脳の中ではドーパミンと言われる快感物質が出るからです。そのため食べることが幸福感につながってしまい、どうしても食べすぎることになります。
またいろいろなストレスがあると、それを解消するために、食べすぎてしまうこともあります。
過食を防ぐには、日常生活の心の安定性が大切です。食べること以外に自分が心から楽しめる趣味や集中できることを持つことが、ダイエットにつながっていきます。

「○○ダイエット」と名がつくような奇抜なダイエット法の多くは長続きしませんし、短期間で体重が減っても、必ずリバウンドが起こって、体重はもどる以上に増えてしまうものです。
それに加えて、急激にやせることはかえって健康にもよくありません。
そんなわけで、ゆっくり、自分の生活にあまり影響を及ぼさない方法で、体重を減らす必要があります。
そこでオススメなのが、次の方法です。

太ってきたような気がして体重が気になり、次第に体重計にのらなくなってきてしまった――という経験はないでしょうか。これは、体重を量ることで太ったことを目の当たりにしてしまうのが怖くなってしまうからです。
そうした心理を利用した、毎日体重を量るだけのダイエットというものがあります。毎日測定していた人は平均して6キログラムも多く体重が減ったという調査結果も出ています。毎日体重を量ることでダイエットを意識する行動に変化していくのです。

体重が気になるようなら、まずは毎日体重を量ってみましょう。続けられるなら、体重は減っていくはずです。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界で一番受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。推理作家協会会員。

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