東京ヤクルトスワローズ 髙津流マネジメント2024

奥川の復活、若手の台頭――
交流戦の奮闘で確かに見えてきた手応え

980日ぶりの勝利――奥川恭伸について

――そして、6月14日の対オリックス・バファローズ戦では、ついに奥川恭伸投手が復帰。5回1失点で試合を作って、980日ぶりに勝利投手となりました。

髙津 5回1失点で、きちんと試合を作ったこと。そして何よりも、勝利投手になったことが本当に大きかったと思います。僕自身は、ヤス(奥川)の投球を間近で見るのは久しぶりだったんですけど、「ヤスのことは、これまでのイメージで見るのはやめよう」と思っていました

――それは、どうしてですか?

髙津 今までのイメージで見るよりは、「まったく新しいピッチャーが投げるんだ」という意識だったし、「今日から新しいヤスが始まるんだ」と考えていました。それはどうしてかというと、「昔はこうだった」とか、「以前こんなボールを投げていた」という目で見るのは、見方が違うんじゃないかと思いました

――故障前の姿と、リハビリを経て復帰した現在の姿とを重ね合わせることは、奥川投手にとっては酷であるという考えからですか?

髙津 このことは本人には言っていません。ここで今、初めて話すことですけど、昔のイメージを重ね合わせないで見た方が本人にとっても、見守る側としてもラクだというのか、「その方がいいだろうな」と思ったからです。「ここから新しいヤスが始まるんだ」というお披露目の機会というイメージで、そして大きな大きな期待の目で僕は見ていました。

――監督も投手出身で、何度も故障を経験していますが、「故障前の自分」と「故障後の自分」を重ね合わせて見られるのは辛いことですか?

髙津 うーん、どうでしょうね。それは本人の考え方次第だと思いますけど、ヤスの場合、10日間の抹消期間を経て戻ってきたわけではなく、長い、長い時間を経て戻ってきた選手なので、ゼロからの目で見てあげた方がいい。というか、見た方がいいと僕は思っていました。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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髙津臣吾 /
2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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