「スワローズらしい良い文化を継承し、明るい素晴らしいチームを作っていかなくてはならない」――就任会見でそう語った、東京ヤクルトスワローズ高津臣吾1軍監督。昨季、2軍監督という立場からチームを支えてきた高津監督は、思わぬ事態に見舞われたこの2020シーズン、1軍監督としてどのようなビジョンでリーグ制覇を目指していくのか。本連載では、今年もインタビュアーに長谷川晶一氏を迎え、高津監督の野球論を余すところなくお届けしていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――ペナントレースも折り返し地点を過ぎました。9月に入り、ますます熾烈な戦いが続いていますが、今回は「監督に必要な資質」について伺いたいと思います。一軍監督に就任した一年目のシーズン途中なので、まだまだ客観視は難しいとは思いますが、現時点で考えていること、取り組んでいることをお話しいただければと思います。まずは、前回のお話の中で「てきぱき判断するように心がけている」と発言していましたが……。
高津 そうですね。できるだけ早い決断をしようとはずっと思っています。たとえば「10秒で答えを出さなくちゃいけない場面では5秒で答えを出す」ような意識です。もちろん、時間ギリギリまでじっくり考えた方がいい答えが出やすいのかもしれない。でも、最初の5秒でまずは僕の考えを示して、残りの5秒で他の人にも考えてもらいたい。そんな思いがあります。
――監督の独断を優先するよりは、ある種の合議制の方がいいという考えですか?
高津 もちろん、速さにこだわるがあまり間違った決断を下してしまっては本末転倒です。でも、少しでも早めに監督の方向性を示すことで、コーチたちの意見を取り入れやすくした方が、より正しい決断に近づけるのではないかと考えています。そういう意味では、監督に必要な資質として決断力、人の意見をまとめる力は絶対だと思います。
――長年、スワローズのヘッドコーチを務めていた丸山完二氏が「これまで多くの監督に仕えてきたけど、最も決断力のない監督が野村克也氏だった」と言っていました。つまり、多くの事態を想定してしまうことで、その分だけ決断が遅れてしまうという意味でした。この点について、高津監督はどのように考えますか?
高津 想定していることについてはすぐに答えは出せるんです。でも、問題は想定していないことが起きたケースです。野球は生き物なので、いくら考えても想定通りにいかないことが多々あります。その際に、いかに決断までの時間を短くするかということが大切なんじゃないのかと僕は考えていますね。