
――以前、高津監督が発表した『二軍監督の仕事 育てるためなら負けてもいい』(光文社新書)には「2023年くらいにはファームで育てた選手がチームの主軸を打って、ローテーションの中心になってほしい」といったことが書かれていました。短期的な目の前の戦いとは別に、数年後を見据えた中長期的な展望などはありますか?
高津 まず、僕の基本にあるのは「選手を必ず成長させなければならない」という思いです。それは新人とか、ベテランとか、外国人だとかは関係なく、「1年経験したら、少なくとも1年分はうまくなってほしい」という思いです。もちろん、若い選手は急激に伸びるし、ベテラン選手は現状をキープすることだけでも大変なんですけど、基本にあるのはその思いです。
――そうした思いを持って、2~3年後を考えているということですか?
高津 そうですね。3年後には村上も23歳、5年後には25歳。村上に限らず、「この選手には3年後にこんな選手になってもらいたい」というイメージはそれぞれ持っています。去年までの3年間、自分が二軍監督時代に一緒にやってきた選手たちが中心となって、強いヤクルトスワローズを築いていくための起用は心がけています。
――開幕直前に中村悠平選手が離脱するというアクシデントがありましたが、その穴をベテランの嶋基宏選手だけでなく、プロ4年目の古賀優大選手を積極的にスタメン起用するなど、将来を見据えた起用も目立ちます。
高津 もちろん、数年先も見据えているけど、現時点でも十分に実力があるからスタメン起用しているわけで、その点は誤解しないでほしいですね。
――改めて、今季の戦い方について伺います。当初、3月開幕予定だったものの、このたびの騒動により、開幕は6月となりました。監督が思い描いていたプランニングも大幅に軌道修正されたのではないですか?
高津 もちろんそうです。その後も、いろいろなことを想定して、シミュレーションもしたけど、誰も経験したことのないこの状況の中でシミュレーション通りに物事が進むとは思っていません。もちろん、いろいろなことは考えるけど、自分一人ではとても難しいので、各コーチにもそれぞれプランを考えてもらっています。みんなの知恵を集めて乗り切っていくしかない。今はそんな思いが強いですね。
――いろいろ準備はするけれども、不測の事態にも対応できるような柔軟性が求められる一年となりそうですね。
高津 想定外のことが起こるときって、誰も何も想定していないわけですよね。当たり前だけど(笑)。そういうときは、その場で判断するしかないわけです。本当ならばいろいろな意見を聞いて、じっくりと判断を下したいけど、時間がなくて瞬時の決断をしなければならないこともあるかもしれない。そのためにこそ、自分の周りに意見を言ってくれる人を置きたいし、僕も積極的に意見を聞いていきたいと考えています。最終判断は僕がするし、僕が責任を取るけれども、参考意見は積極的に求めていく。そんな姿勢を大切に今シーズンは乗り切っていきたいですね。