「スワローズらしい良い文化を継承し、明るい素晴らしいチームを作っていかなくてはならない」――就任会見でそう語った、東京ヤクルトスワローズ高津臣吾1軍監督。 昨季、2軍監督という立場からチームを支えてきた高津監督は、思わぬ事態に見舞われたこの2020シーズン、1軍監督としてどのようなビジョンでリーグ制覇を目指していくのか。本連載では、今年もインタビュアーに長谷川晶一氏を迎え、高津監督の野球論を余すところなくお届けしていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――これまで、真中満さん、小川淳司さんと歴代のヤクルト監督に、ペナントレースと同時進行で折々の思い、マネージメント術についてお話を伺ってきました。今季からは高津臣吾新監督にも、お話を伺って行こうと思っています。
高津 わかりました。どうぞよろしくお願いいたします。
――このたびの騒動により、開幕が当初の予定よりも3カ月も遅れることとなりました。ようやく開幕にこぎつけましたが、現在の心境はいかがですか?
高津 3月の時点で、「開幕延期です」ってなったときに、チーム自体を休止しました。あの頃のことを考えると、この1カ月間で自主練が始まり、チーム練習が始まり、5月末で紅白戦をやり、今月頭から練習試合が始まったり、一気にいろいろなことが進んだ気がします。結果的に3カ月は遅れましたけど、気持ち的には再び盛り上がってきているところですね。
――選手の様子はいかがですか?
高津 みんな元気ですよ。各自、自主トレもすごくしっかりやってきてくれていたので、全体練習が始まってもそんな違和感なかったですし。あとは感覚ですよね。みんなといる感覚であったり、本当のゲームの感覚っていうのは取り戻していかないと。でも、万全の状態で本番を迎えることができたと思ってます。
――さて、昨年まで3年間、二軍監督を務めた後、満を持して一軍監督就任となりました。まずは、就任にいたる経緯を教えていただけますか?
高津 昨年のシーズン終盤、9月の頭に(衣笠剛)球団社長からお電話をいただきました。その場での即答を求められたんですけど、いったん返事を保留させていただいて、数日後に「お受けします」と答えました。
――電話があった時点では、ある程度の予想はあったのですか?
高津 予想はしていなかったですね。もちろん、チーム状況がよくないことは理解していたし、今後のことも気にはなっていましたけど、「まさか自分が」という感じでした。もちろん、ずいぶん昔に「ゆくゆくは一軍監督を務めてみたい」と考えたことはあります。でも、2017(平成29)年に二軍監督になったときにはその思いもなかったですね。
――就任依頼を受けて、いったん返事を保留したのはどうしてですか?
高津 具体的な条件を提示していただいたわけではないし、そもそも「監督をお願いしたいんだけど」、「はい、わかりました」って、すぐに返事ができるような簡単なポジションでもないですし……。だから、即断はできなかったし、家族や信頼できる人に相談をするつもりだったけど、電話を切った段階で「やろう」という思いは持っていました。
――昨年最下位に沈んだチームを率いるということへのプレッシャーはいかがでしたか?
高津 チーム事情が大変な状況にあるのはもちろんわかっていたし、すごく大変な道のりになるということは覚悟していました。でも、チームが困っているときに「チーム自体を変えてほしい」と声を掛けていただいたことはすごく光栄なことだと思ったので、それほど迷うことはなかったですね。