成績が振るわない、メンバーが互いに無関心でいっさい協力し合わない、仕事を作業と思っており楽しそうに働いていない、離職者が多く人の入れ替わりが激しい……。これらは日本の多くの職場で見られる光景です。こうした環境に疲弊し、働くことに希望を見出だせない人が増えています。
この絶望的な状況を変えられる唯一の方法が「チームづくり」です。チームづくりがうまくいけば、すべてが劇的に変わります。部下も会社もあなた自身もラクにする、チームづくりのノウハウを指南します。
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組織には「変化」が必要です。
ところが、変化をするときには、変化を嫌う人が現れます。変化を好む人は、この気持ちに理解を示しません。
とはいえ、変化を嫌う人の多くは、きちんと話をすると変化の必要性はわかってくれるものです。
変化を好む人は、説明をしたがりません。しかし、これは責任の話です。
変化を強いるならば、説明責任を果たす。
このステップは飛ばさないようにしてください。
部下に変化を求めるときの大原則は、部下が自分から変わりたくなるように仕向けることです。
ここで思い出してほしいのが、イソップ寓話「北風と太陽」です。この話はご存知の方も多いでしょう。
北風と太陽が力比べをすることになり、通りすがりの旅人の外套を脱がせようとします。
北風が力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとするも、うまくいきません。
それに対して太陽が日光を照らしつけると、旅人は暑さに耐えかねて自ら外套を脱ぐ、というお話です。
この寓話は、誰かに何かの行動を起こさせたいとき、無理やりやらせようとしても逆効果になり、本人がそうしたくなるように仕向けることが有効だと教えてくれます。
私には間もなく小学生になる息子がいるので、先日久しぶりに北風と太陽の絵本を読んだのですが、大人になってこの物語を読むと、ツッコミを入れたくなるところがあります。
この勝負、圧倒的に北風が不利です。旅人の外套を脱がせるという勝負において、北風はどう考えても勝ち目がありません。「持っている服を着せる」という勝負であれば、北風が圧勝したことでしょう。
勝負に負けた北風は、「なんでも無理やりやろうとするのはよくないんだね」と太陽にしおらしく語ります。子どもに向けた物語になっているとわかってはいるのですが、1人ひとりの強みを活かしたいとつい考えてしまう私としては、なんとも煮えきらない気持ちになりました。
しかし、読み終えてふと、「自分は北風アプローチをすることが多いだろうか? それとも太陽アプローチをすることが多いだろうか?」と自問してみると、意外なことに気づきました。
「北風アプローチ、めっちゃやっている!」
たとえば、部下が日報を書こうとしないとします。それに対して、どんなアプローチをしてきたでしょうか。
・「なんで書かないんだ?」と問い詰める
・書かないと罰則を設けようと考える
・書くまで帰らないように命じる
これらはすべて、北風アプローチです。
本人が自ら日報を書きたくなるようなアプローチをとれていません。私がパッと思いつくアプローチは、北風アプローチばかり。脱ぎたくないと思っている旅人に北風で強引に脱がせようとしているわけです。
寓話で読むと太陽が正しく感じるのに、いざ自分が当事者となると、北風アプローチになってしまう。
強く言ってみたり、見放してみたり、ときには脅しに近いような言葉を投げてみたり……。