成績が振るわない、メンバーが互いに無関心でいっさい協力し合わない、仕事を作業と思っており楽しそうに働いていない、離職者が多く人の入れ替わりが激しい……。これらは日本の多くの職場で見られる光景です。こうした環境に疲弊し、働くことに希望を見出だせない人が増えています。
この絶望的な状況を変えられる唯一の方法が「チームづくり」です。チームづくりがうまくいけば、すべてが劇的に変わります。部下も会社もあなた自身もラクにする、チームづくりのノウハウを指南します。
この連載をまとめ、大幅に加筆・改稿した、ビジネス書『チームづくりの教科書』(高野俊一)が、アルファポリスより好評発売中です。
前回、主体性を引き出すために、まず質問し、MUSTに向き合い、CANを増やし、WANTが湧いてこさせるのが大事だとお伝えしました。
この段階に来たら、ストレートに「やりたいことは何?」と聞いてみてください。MUSTにもCANにも向き合ってきた部下ならば、そこになんらかの答えを出すでしょう。
このとき、WANTは利己的な欲求でしょうか。それとも、利他的な欲求でしょうか。自分を成長させたい、自分の給料を上げたいといった利己的な欲求を持つことは悪いことではありません。利己的欲求は仕事に向かうモチベーションになります。
ただし、利己的欲求を利他的欲求に「つなげる」発想がリーダーには必要なのです。そうすることによって、部下の目標がチーム全体で応援できる目標に昇華されます。
たとえば、「給料を上げたい」という利己的欲求ならば、どうすれば良いのでしょうか? ビジネスの社会には、多く人の役に立つ人がより多くの報酬を得ることができるという、基本原則があります。給料が上がるということは、それだけ人の役に立つ人になる必要があるわけです。人の役に立つつもりがなく、何も成長しないのに給料だけが大幅に上がるということはありえません。
どんな役立ち方をしたいかを質問してみましょう。この答えが、そのまま利他目標になります。「〇〇で困っている人を救う」「〇〇が欲しい人になるべく安く届ける」といった、利他的な目標を掲げ、その結果、利己的な目標も達成できるのが理想です。入口は利己目標だったとしても、すべての仕事は誰かの役に立っているわけですから、そこから利他目標を導くことはできるはずです。
常に問いを持ち、MUST、CAN、WANTを考え続けた結果、最終的に到達するのは「使命感」です。
MUSTとして社会や世の中から求められる。CANとして自分には実現可能だと思えている。WANTとして心からその目標を実現したいと思う。まさに自分の命を使って、その事業を実現したいと考えている状態というわけです。
主体性は、このステップに取り組めば、どんどん高まっていきます。
やる気がない、自分で考えない、どうやって火をつけたらいいかわからない、そんな部下であっても、質問を投げかけて問いを持たせ、MUSTに向き合ってCANを増やし、3つのキャリアをデザインさせて仕事に取り組んでいくと、部下の問いとCANはどんどん増えていきます。すると、WANTが湧き上がってきます。
本当にそうか? と思っている方もいるかもしれません。部下の主体性を引き出すというのは、ビジネスにおいて大変難易度の高いテーマですから。実際に「やる気のない部下をやる気にさせることはできない」「主体性がない、ダメなヤツはダメ」という意見はよく聞きます。
でも、私はそう思いません。主体性は育てることができると思っています。