成績が振るわない、メンバーが互いに無関心でいっさい協力し合わない、仕事を作業と思っており楽しそうに働いていない、離職者が多く人の入れ替わりが激しい……。これらは日本の多くの職場で見られる光景です。こうした環境に疲弊し、働くことに希望を見出だせない人が増えています。
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リーダーが質問をすることによって部下が自分で「問い」を持てるようになったら、次は仕事の中でやりたいことを見つけさせねばなりません。しかしそれがある部下は稀で、「何かやりたいことはある?」と質問しても返答が得られないものです。
では、どうしたらよいのか。
MUST、CAN、WANTの順番で質問し、やりたいことを見つけさせるのです。
①MUST … やるべきこと
②CAN … できること
③WANT … やりたいこと
部下に描かせる目標は、MUSTでもあり、CANでもあり、WANTでもある状態が重要です。つまり、やるべきだし、やれるし、やりたいこと。将来像がこの3つを満たした状態で描けたら、魅力的な目標になります。
目標を決められない、描けない人の多くが、WANT(やりたいこと)から考えるという間違ったアプローチ方法をとっています。目標といえばやりたいこと、というイメージが確かに強いのですが、何も材料がない状態で見つけるのは至難の業。「やりたいことなんてない……」と思考停止して、未来が描けなくなってしまいます。繰り返しますが、このとき描くべき順番は、MUST、CAN、WANTの順です。
MUSTとはやるべきことですから、会社から期待されていること、顧客から期待されていることになります。これは見方を変えれば、MUSTは自分で考えなくてよいということです。
MUSTを認識するのはとても簡単なようですが、把握していないことが多いものです。まず、会社から求められていることを、上司に確認しましょう。あなたの部下の上司はあなたです。あなたが部下に求めていることを伝えてあげてください。お客様に求められていることを聞くのも効果的です。一番のお得意様に、「私たちにどんなことを期待していますか?」「私たちがどんなふうになったらうれしいですか?」とヒアリングしてみてください。MUSTをヒアリングすることで、自分が何を期待されているのかを改めて理解することができます。MUSTを掘り下げ、自分たちの進むべき未来のヒントがたくさん得られるのです。
次に考えるのはCAN、できることです。ここでは、部下の、そして自分たちの「強み」に着目する必要があります。自分たちはどんなことができるのか。CANは、部下や上司と一緒に考えるといいでしょう。
このとき重要なのが、WANTの視点で考えないことです。というのも、CANの話をしているとついつい「やりたい/やりたくない」というWANTの話にすり替わってしまうことが多いからです。とりかかる前から、可能性を潰してしまうことにつながります。WANTかどうかを考えるのはあとです。部下が、自分たちがどんなことができるのか、CANの選択肢だけ洗いだすようにしましょう。
最後はWANTです。ここまで来れば、目標となるWANTを見つけるのは簡単です。漠然と探すのではなく、MUSTとCANの中から探すのです。上の図のように、MUSTとCANで見つけたものの中から「やりたい!」と思うものを探します。
MUSTでもCANでもないものに、強いWANTは湧いてきません。せいぜいもっと楽しみたいとか、休みを増やしたいとか、小さな願望がある程度。強いWANTを見つけたければ、MUSTとCANを明確にします。ここに魅力的なビジョンを描く近道があるのです。