5つのステップのうち、もっと大切なステップ1について解説します。
主体的な人を育てるうえで、もっとも大事なキーワードは「問い」です。部下は、自分で問いを生めるようになってもらわなければなりません。たとえば、「いま、なんの仕事をしたらいいか?」「どうすればこの問題を解決できるか?」「誰か相談できる人はいないか?」「もっといいアイデアはないか?」といった問いがある状態を主体的だといいます。
主体的でない人には、この問いがありません。ただ作業をこなす、仕事を終わらせることにだけ着目し、「どうすれば?」「なぜ?」といった問いがないので、説明しても耳に入らず覚えないのです。逆に言えば、常に自身に問いがある状態にできれば、部下を主体的な人に変革させることも可能です。問いさえあれば、自ら考えて行動できるようになるのです。
では、どうすれば問いを持ってくれるようになるのか。そこで重要になるのが、リーダーの質問力です。部下の育成において、伝達、指示、確認を「質問」に変えると、部下の問いのレベルが飛躍的に高まります。
① 伝達 … 「伝達」を「質問」に変え、相手の「関心」を高める
② 指示 … 「指示」を「質問」に変え、相手に「考え」させる
③ 確認 … 「確認」を「質問」に変え、相手の「理解度」を高める
伝達、指示、確認は、リーダーとして日々、部下におこなっていることだと思います。この3つをすべて質問に変えてしまうのです。
人は、質問されると関心が高まります。
「今月の目標は〇〇円です」
「来月は〇〇に取り組みます」
というように、決まっていることを伝えるだけでは、部下の関心がない場合には右から左に聞き流され、ほとんど覚えてもらえません。あとになって「伝えたよね」「聞いてないです」という不毛なやりとりが繰り返されてしまいます。
「今月の目標はいくらだと思う?」
「来月は何に取り組んだらいいと思う?」
このように「伝達」を「質問」に変えるだけで、部下の関心を高めることができます。
また、人は質問されるとつい考えてしまうものです。「今日のごはんは何を食べたい?」と質問されると、食べたいものを考えます。「明日の予定は何?」と質問されると、明日のスケジュールを考えます。「来月の目標は何?」と質問されると、来月の目標を考えるようになります。そして「将来の夢は何?」といつも質問されていると、将来の夢を常に考える人になります。
「どうやったらうまくいくと思う?」「この情報は誰が持っているかな?」「前に教えた方法でできないかな?」「いつまでに終わらせたらいいと思う?」といったように、部下に問いを与えて、毎回考えさせることが理想です。
とはいえ実際には、問い与えることなく指示してしまうことのほうが多いでしょう。しかし、そのように指示出しを続けていると、部下は指示待ち人間になり、自分で考えなくなります。部下に考えてほしいことを指示ではなく質問に変えることで、部下はそのことについて、否応なしに考えるようになります。このやりとりが、部下の問いのレベルを上げていくのです。
あなたは指示を出したあと、部下が理解したかどうか、どのように確認していますか? この確認でも、「〇〇は理解できた?」「〇〇は大丈夫?」と1つひとつを「質問」することが重要です。ちなみに、私の前職のコンサルティング会社では、上司が部下に仕事を依頼する際、必ず復唱してもらうという習慣がありました。伝えたつもりでも、復唱してもらうと、思った以上に理解できていなかったり、抜け漏れがあったりするのです。
確認の際には質問に加えて、「いま言った指示を復唱してくれる?」とまるまる答えさせると、部下は指示内容を深く理解し、自分で考える癖がつくようになります。