次のステップは、「困りごとを解消する」です。単に組織のパフォーマンスを落とすだけの不満や愚痴は、ニコニコと話を聞いてスルーしてもよいのですが、中には組織の改善につながるものもあります。そんなときは力を貸しましょう。困りごとの解消は、関係性の改善に非常に役に立ちます。
困りごとというのは、人によって感じ方が違うものです。たとえば、椅子の座り心地が悪いとか肩が凝るとか腰が痛いとか、空調が寒いとか暑いとか、会話の音量がうるさくて集中できないとか。わりと小さなことで、皆大きな不満を感じているのです。
そういった小さな問題を、小さなうちに解消してあげる。すると、困りごとがなくなった感謝の気持ちが育ち、協力関係ができあがっていきます。逆に、この小さな火種を放置してしまうとどんどん大きくなってしまい、大炎上状態になるのです。
まだ関係性ができていない段階では、「小さなことこそ大きなこと」として、1つひとつ改善していくことが重要です。
空調の温度のような問題はまさに好例でしょう。組織には必ず暑がりと寒がりがいますから、誰にとっても最適な温度というのは存在しません。そのため、「仕方ないよね」と放置して、いつまで経っても改善しない組織が非常に多いのです。
しかし、この小さな火種が「うちの会社って〇〇だよね」と愚痴の温床となり、大量の腐ったリンゴ社員を育ててしまうことになります。
この問題を軽視せずに、空調の温度についてみんながどう感じているのか、ミーティングでヒアリングしたり、個別に意見を聞いたりしましょう。暑いと思っている人、ちょうどいいと思っている人、寒いと思っている人の人数を出して共有すると、問題の認識を組織内でも持つようになります。
空調の位置によっては、風が当たって極端に寒い場所があったり、空調が利きにくいエリアがあったりします。席替えをしてみたり、風よけを設置して寒さを防いだり、極度の暑がりの人には扇風機をつけたりなど、改善の方法はいくらでもあります。
繰り返しになりますが、大事なのは「小さなことこそ大きなこと」としてしっかりと話し合って解消することです。目標に燃える人や優秀な人ほどこのプロセスを省略します。「そんな小さな問題に関わっている時間はない」と思ってしまうのです。
しかしこの火種を放置すると、バッドサイクルに突入し、結果として組織としての生産性が著しく落ちます。部下の困りごとを見つけたら逆にチャンスだと思い、解消に注力しましょう。
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