上司1年目は“仕組み”を使え!

デキる上司は「部下との距離」をどう縮めるか

2022.10.20 公式 上司1年目は“仕組み”を使え! 第36回
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成績が振るわない、メンバーが互いに無関心でいっさい協力し合わない、仕事を作業と思っており楽しそうに働いていない、離職者が多く人の入れ替わりが激しい……。これらは日本の多くの職場で見られる光景です。こうした環境に疲弊し、働くことに希望を見出だせない人が増えています。
この絶望的な状況を変えられる唯一の方法が「チームづくり」です。チームづくりがうまくいけば、すべてが劇的に変わります。部下も会社もあなた自身もラクにする、チームづくりのノウハウを指南します。

この連載をまとめ、大幅に加筆・改稿した、ビジネス書『チームづくりの教科書』(高野俊一)が、アルファポリスより好評発売中です。

部下にとってあなたはどんな存在?

部下との関係性には段階があります。人と人との関係性を考えたとき、「上から目線」とか「見下す」という言葉があるように、日本人は細やかな「上下」の感覚を持っています。以下の図は、それをポジションランクとして言語化したものです。


       ※図を拡大する

部下から見て、自分がどの位置にいるか考えてみてください。ある部下にとっては「無害な人」、別の部下にとっては「憧れ」、また別の部下にとっては「情報屋」というように、部下ごとに異なるポジションに位置することが普通です。
皆さんが「この部下は仕事がしやすい」「この部下は仕事がしにくい」と部下によって感じ方が変わるとしたら、それはじつはあなたのポジションが違うのです。
これは、あなたと上司との関係性を考えてみたり、お客様とのことを考えてみたりしても当てはめることができます。ぜひ自分のポジションを把握してみてください。

部下に嫌われている?

部下に嫌われており、このランクには当てはまらないという意見もあるかもしれません。しかし、私は「嫌い」という感情はポジションランクとは別だと考えています。

研修ではよく「好きの反対はなんですか?」と質問するのですが、好きの対義語は嫌いではなく、無関心です。嫌いという感情は、相手に関心があるという意味で、無関心より好きに近いのです。
部下から嫌われているとしても、頼られているところはあるはずです。「情報屋」として頼ってもらっているのか、「相談相手」として頼ってもらっているのか、同じ目標を持つ「同志」と思われているのか、「憧れ」ていて尊敬しているのか。なお、憧れていて尊敬しているけど嫌いということはよくあります。あなたを嫌う部下に対してもどのポジションランクか、改めて把握してみるとよいでしょう。

関係性をつくる5つのステップ

では具体的に関係性をよくするために、どんなアクションをすればよいのでしょうか。ポジションランクを上げていくためには、次の5つのステップがあります。今回のこのステップのうち、重要な2つのステップを紹介いたします。

関係性をつくる5つのステップ
ステップ1) ニコニコ愚痴を聞く
ステップ2) 困りごとを解消する
ステップ3) 役割を分担する
ステップ4) 期待を伝える
ステップ5) 共に喜び、共にくやしがる

関係性を強化する最初のステップは、「ニコニコ愚痴を聞く」です。それによって部下に、「愚痴を言っても許されるんだ」と認識してもらい、心理的安全性があると感じてもらうのです。

それと同時に、やはり目標を掲げる必要があります。とはいえ、やる気を失っている部下に、あれやこれやと働きかけても徒労に終わるでしょう。スルーされるか、うっとうしいと思われて目標アレルギーを発症させてしまうのがオチです。

しかしだからといって、目標を掲げないでいいわけではありません。目標を掲げずに関係性をつくろうとすると、部下のご機嫌とりをするスタンスに陥ります。
部下のネガティブな態度は、組織のパフォーマンスを下げる強烈なエネルギーを持っています。このすさまじいネガティブパワーに流されないようにするためには「目標」が必要なのです。

目標に向かって対話を続ける

「じゃ、どうしようか?」
「どうすれば解決するかな」

こんなふうにニコニコと話を聞き、部下のネガティブな態度に流されることなく、ブレずに目標に向かいましょう。簡単なことではありませんが、このアプローチでうまくいくという見通しさえあれば、なんとかやれるイメージが湧きませんか?

そもそもやる気を失っている部下とコミュニケーションをとることは、精神的にきついことです。しかし、「目標ベースのコミュニケーション」をとれば道が開けると信じて、ぜひチャレンジしてみてください。きっと、少しずつ変化が見られるはずです。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...
その仕事、部下に任せなさい。

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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