上司1年目は“仕組み”を使え!

「一生ついていきます!」と思わせる、デキるリーダーの目標の掲げ方

2022.09.15 公式 上司1年目は“仕組み”を使え! 第34回

目標は提示の仕方が重要

チームとして目標を掲げる場合、目標自体はなんでもいいのですが、共感してもらうためには次の2つを満たすように工夫する必要があります。

・みんなの求める目標であること
・自分個人のための目標ではないこと

実際に自分が率いるチームの目標を書き出してみると、自分本位の利己目標になってしまうものです。
たとえばあなたが、部門の売上を1.5倍にしたいと考えていたとします。
もちろんその目標は、自分だけのための利己目標ではないでしょう。会社のため、一緒に取り組む仲間のため、ひいては商品を購入してくれる顧客のため……。
たとえそうであってもそれは伝わりません。「自分が出世したいからあの目標を掲げたんだ……」と陰口を叩かれるのが普通です。
だからこそ、目標を掲げるときは、みんなの求める共感目標として提示する必要があるのです。
それを伝わりやすくする方法が、BAF法です。

① B … ビフォー
② A … アフター
③ F … フューチャー

この順番で伝えるとうまくいきます。
前項で目標にはWhyが大事だと書きましたが、このBAF法で目標を提示すると、そのWhyをストーリーのように伝えることができるのです。

① B … ビフォー
ビフォーとは、自分のつらい過去や苦い思い出を指します。いま目指したいと思っている目標は、自分のつらい過去、苦しい思い出がきっかけになっていないでしょうか? 過去のネガティブな経験がベースにあると、目標への共感度は上がります。

② A … アフター
アフターは、現在の思いです。過去のつらい思いを他の人に味わってほしくない。その思いが、これから向かう目標の原動力になっていることを伝えます。

③ F … フューチャー
その結果、どんな未来をつくりたいのかを伝えます。多くの場合、このフューチャーだけを目標だと思いがちなのですが、ビフォー、アフターを踏まえてフューチャーを語ることで、目標を達成したいという情熱の本気度と、その背景にある思いに共感させることができます。

たとえば「出世したい」というきわめて個人的な利己目標も、BAF法を使うとみんなの求める共感目標に転換することができます。
Bのビフォーは「出世していなかったことによってつらかった過去」です。それによって味わったつらい出来事を伝えます。

・自分の無力さが原因で大きなミスを犯した。部下が辞めた。会社に迷惑をかけた
・もしももっと自分に力があったら、あの問題を解決できた
・自分は上に行かなきゃいけないと思った
・会社の上層部に入って力をつけ、多くの人の役に立つ自分になりたいと思った

続いてAのアフターは、「自分の経験を他の人に味わってほしくないという現在の思い」です。

・いまこうして部下ができて、以前よりは力を持てた
・でもまだまだだと思っている。もっと多くの人の力になりたい

そして最後、Fのフューチャーは「つくりたい未来」です。

・会社の上層部に上がることで、会社のこの問題を解決したい
・もっと社会にインパクトを与えられる存在になりたい

Fだけでは利己的な目標にしか感じられませんが、BAFで通して読むと共感できるようになったのではないでしょうか。
「海賊王にオレはなる!!!!」
この1つのセリフだけでは共感目標にはならず、ルフィを応援しようとは思いません。
しかし私たちは『ワンピース』の物語を通して、ルフィのビフォー、アフター、フューチャーを知っています。
だからこそ、この目標に共感し、応援できるのです。

目標を掲げることに対して、難しく考えすぎる必要はありません。
やりたいことを書き出し、自分の目指したい状態を見つけて共有し、語る際はBAF法でプレゼン設計する。
そうすれば、みんなの求める魅力的な共感目標を描くことができるのです。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
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その仕事、部下に任せなさい。

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高野俊一 /
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