あなたは、部下を褒めるのが得意ですか?
リーダーに向けた研修でそう質問すると、ほとんどの方が「苦手」と答えます。
仕事を任せた際、正しく褒めることができれば、部下の成長は促進され、自信をつけ、さらに多くの仕事を覚えようとしてくれます。
そういう意味でも、仕事を任せるうえで「褒める技術」は非常に重要なのです。
ところが、褒めることに苦手意識を持った人が圧倒的に多い。
これはなぜでしょうか。
世の中の書籍でも「褒める」ことの重要性はよく取り上げられており、「とにかく褒めましょう」「褒め上手になりましょう」と推奨されます。
「よくできたね!」
「すごい、才能があるよ!」
「ここまでできるとは思わなかった。参った!」
などと、褒めちぎることを指導するものもあります。
相手を持ち上げ、おだてるようなことを言ってモチベーションを上げ、気分がよくなって前向きになれるような言葉さえ発すれば、褒めたことになると考えてはいませんか?
しかし、それではうまく行きません。
なぜなら、その褒め方は間違っているからです。
褒め方が間違っていると、部下の成長を促進するどころか、大きく阻害することにもなりかねません。
そして、多くの人が「褒めるのが苦手」だと思っている理由も、実は間違った褒め方をしているからなのです。
正しい褒め方を知ることで苦手意識は消え去り、部下の成長を何倍にも早めることができるのです。
では、正しい褒め方とはどういうものなのでしょうか?
まず、多くの人が抱いている「褒めるのが苦手」という意識。
その原因である、「褒めることができない理由」を見ていきましょう。
褒め下手の人は、なぜ褒めることができないのでしょうか。
聞いていくと、大きく2つのパターンに分かれます。
①抵抗感:(自分自身が)照れくさいから
「すごいね!」「さすがだね!」などと、部下をおだてることに抵抗を感じていませんか?大げさに褒めようとすると、かえって相手をバカにしているような気がして褒められないのがこのパターンです。
②逆効果:(部下が)褒められるレベルではないから
褒めたくても褒められないのは、部下のレベルが低いからではないですか? もっとレベルの高い仕事をしてくれればもちろん褒めますが、低いレベルで褒めてしまったら、「その基準でいいんだ」と承認したことになる危惧があって褒められないのがこのパターンです。
特に、部下が調子に乗るタイプだと、ますます顕著に逆効果を恐れます。
褒められたことで満足して、それ以上を目指さなくなる懸念があるので、褒めないことで「まだまだ自分は未熟である」と部下に察してほしいわけです。
この2つのパターンに共通する「褒めることができない本当の理由」は、実は、「正しい褒め方」を知らないことにあります。
そもそも、褒める目的とは何でしょうか?
何のために部下を褒めるのでしょうか?
そう問うと、以下のように答える人が多いのではないはずです。
・部下のモチベーションをアップさせるため。
・部下に気持ちよく仕事をしてもらうため。
しかし、これらは褒める目的としては相応しくありません。
では、正しい「褒める目的」は何か……。
それはズバリ、「部下のよい行動を習慣化するため」です。
人は、褒められたことを繰り返そうとする特性があります。
部下は褒められたことを繰り返そうとし、褒められていないことは繰り返そうとしません。
部下のよい行動を的確に褒め、習慣化させること。
これが、正しい意味での「褒める目的」です。
多くの場合、自分の行動が「よい行動」だったのか「よくない行動」だったのか、部下は判断できていません。
上司は、部下の行動1つひとつを「これは正解だ」と教えてあげる必要があります。
この、「よい行動」が「よい行動」であると教えてあげる行為こそが、「褒める」ということなのです
褒められた部下は、「この行動はよい行動なのだ」と認識することによって、褒められた行動を繰り返そうとします。褒められた行動を繰り返すことで「習慣化」されるのです。
つまり、「褒める」とは、よい行動であると知らせてあげるだけでいいのです。
「すごいな、お前天才かもしれないぞ!」などと大げさにおだてたりする必要はありませんし、「それはよい行動だよ」と知らせるだけの行為に、逆効果の心配もありません。