仕事での付き合い、学校での付き合い、あるいは近所付き合いや親戚付き合いでもなんでもいいですが、こうした人付き合いの中で流されると厄介なのが「悪いうわさ」。
「あの人、課長と不倫してるらしいよ」
「アイツ、他の会社でウチの部長の悪口、言って回ってるらしいぞ」
「近所の○○さんって、家賃滞納してるんですって。生活苦しいのかしら」
「いとこの○○君のお嫁さん。結婚したのも、遺産が目当てだったんじゃないかしら」
こういうゴシップというのはくだらないようでいて、一回対処を間違えると大変です。会社で大事な仕事を任されるかどうか、仕事の難しい場面で部下がついてくるかどうか、近所と仲良くやれるかどうか、親族会議で自分の言い分を聞いてもらえるかどうか、といった様々な場面に悪影響を与えてきます。
だからこそ、自分にまつわる悪いうわさというのは正しい方法で否定し、早い段階で打ち消しておかなければなりません。そうしないと信用がどんどん失われ、誰も話を聞いてくれなくなってしまうのです。そこで今回は、ギリシャ・ローマ式弁論術のテクニックの中から、「悪いうわさ」への対処法を解説します。
結論から言えば、自分への悪いうわさに対しては、有利な「争点」を作ってそこで反論することが最も大事です。
どういうことか?
例えば、「他社で部長の悪口を言った」といううわさを流されて、これを否定しなければいけないとしましょう。これが全くの事実無根で、部長の話自体を他社でまったくしたことがないのなら、当然
「事実無根です。ウソだと思うのなら、他社の人に聞いてください」
などと全否定すべきです。やってもいないことを認める必要はありません。しかし問題なのは、部分的に事実である場合、あるいは全く事実である場合です。
こうした際には、「たしかに○○したけど、××はしていない」といったように、事実にあたる部分については、先手を打って認めたうえで反論しましょう。例えば、悪口は言っていないにせよ、実際に他社で部長の話をしていたとします。そうした際には、
「他社で部長の話をしたのは本当ですが、悪口など一切言っていません」
と「他社で部長の話をした」という点は認めたうえで、「話したのは悪口ではない」という争点で反論するようにするのです。
このような場面で一番まずいのが、反射的に「それは、まったくのデマです」などと雑な言い方で全否定すること。
それをやってしまうと、あとで周囲から「先方に聞いたら、やっぱり部長の話をしてたらしいじゃないか」といった事実が出てきたときに、「アイツ、隠してた」となって話を聞いてもらえなくなってしまいます。だからこそ、事実にあたる部分は先手を打って認める。これが大切なのです。