こんな仕事絶対イヤだ!

身だしなみが成功の秘訣――ネズミ捕り師

2018.01.17 公式 こんな仕事絶対イヤだ! 第94回

巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……

ご家庭のネズミ駆除はおまかせ

ネズミは何でもよく食べる。自分よりずっと大きい牛や馬に噛み付くし、あわよくば人間にも噛み付いてくる。空腹でしょうがない場合は、仲間を殺して食うぐらいだから念の入ったことである。結果として、ネズミを捕まえる仕事が生まれたのは社会の必然と言えよう。

『ネズミ捕り師』は営業力が命だった。ご家庭に上がり込んで仕事をするのだから、身だしなみには充分注意が必要であった。ベルベットの上着にコーデュロイのズボン、頭にはシルクハットというシャレオツ捕り師もいたほどで、彼らがいかに外見に気を配っていたかが良く分かる。また、仕事のパートナーにはフェレットを使っていた。依頼者宅のネズミの棲み処にフェレットをインサートし、ネズミが逃げてきたところを捕らえるのである。まさにしてやったりの瞬間だが、奥様にはちょっとした悲鳴ものの絵図であろう。めでたくネズミを生け捕りにしても、彼らの仕事はまだあった。後顧(こうこ)の憂いを無くす強力ネズミ駆除剤改めヒ素を売り込むのだ。プロが薦める薬とあっては、奥様のお財布のヒモもついつい緩んでしまうというものだ。

得られる報酬はそこそこ良かった。駆除料に加え、捕まえたネズミをショー用としてパブに売れば副収入も得られた。ネズミに噛まれて病気になるリスクがあったが、そこは考えても始まらないので考えない。ちなみに、売られたネズミには犬と対決&虐殺される末路が待っていたそうである。観客はヒャッハー状態であるが、安易に残酷と言うなかれ。人間のほうも、ネズミが運んだペストで何十万人と死んでいたのだから。

(illustration:斉藤剛史)


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プロフィール

清水謙太郎
清水謙太郎

1981年3月、東京都生まれ。成蹊大学卒業後にパソコン雑誌の編集を手がける。また、フリーライターとして文房具、自転車などの書籍のライティングや秋葉原のショップ取材等もこなし、多岐に渡る分野でマルチな才能を発揮している。

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金持ちの道楽として庭で飼われた「隠遁者」、貴族の吐いたゲロを素早く回収する...
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