ここでは、自動車の販売、住宅のリフォーム、保険、住宅営業の個人向け営業という、4つの事例に分けて具体的な営業方法を紹介します。
まず自動車の販売であるカーディーラー営業担当の場合、値段交渉が終わり、お客さまが車の購入の決断をしたところで、次の車検までの保守点検整備の契約を提案してみましょう。オイル交換、オイルエレメント交換、タイヤの空気圧調整、万が一故障になった箇所があった場合の無料交換などがセットになったものがいいでしょう。販売店ではこうした保守点検のプランを用意しているはずですし、社内でおすすめするように言われているかもしれません。ベストなタイミングは、お客さまが契約する前で、車購入の決断をしたあたりです。見積時にこのプランを提示してしまうと、購入費用削減のために、項目が削られる可能性があります。
お客さまが車を大切に乗るためには、定期的にカー用品量販店などでオイル交換をする必要があります。空気圧調整も、昨今のガソリンスタンドでは自分で作業しないといけないことも多く、手間がかかるためムダにはならないサービスです。保守点検の契約は販売店で契約してもらった方が、お客さまと接する機会も多くなり、次の車も買ってもらいやすくなります。
次に、住宅のリフォームの営業マンの場合であれば、キッチン、お風呂など、お客さまの希望するリフォーム箇所の商談が終わり、成約の意思を示したところで、購入特典サービスとしてお得感がある割引率を示し、お手頃価格の別のサービスを提案してみましょう。
例えば、網戸の張り替え、防音、断熱の窓やサッシの取替えなど、なるべく低額で「営業マンに説明されると必要かも……」と思うものを選んで提案するのが賢明です。ちなみに、キッチンだけのリフォーム希望者に対してお風呂やトイレのリフォームを提案するのは、成約の意思を示す前にした方が得策です。あとから別のプランを出して無理にすすめると、不信感を抱かれかねませんので要注意です。
そして、保険の営業マンの場合であれば、他社からの切り替え、保険契約の見直し、更新の時が、追加提案するのにベストなタイミングです。現在は昔と違い、保険の営業マンに説明を受け、内容が理解できなくても契約してしまうことは、ほとんどなくなりました。保険の内容や支払いの条件をきちんと示し、納得してもらってから契約してもらうケースがほとんどです。こうした時代の変化を鑑み、生命保険の契約が終わってから「後出し」で別の医療保険、がん保険、三大疾病特約などを契約してもらうのは、お客さまが「値段が高い」と感じてしまい、ほとんど契約に至りません(生命保険と医療保険が、別々の契約の場合)。
例えば、医療保険を検討している時、興味を示した相手に対して、がん保険や三大疾病特約を紹介し、そんなに追加料金がかからなくて安心が手に入る旨を説明するといいでしょう。ポイントは、お客さまが望んでいる商品よりも、金額的に安い商品を提示し、そこに新規の保険を組み合わせるような提案をすることです。
最後に、住宅の販売は、お客さまにとって非常に高い買い物となるため、保証や保守点検などもプランが費用の中に含まれているケースが多いのが実情です。そのため、あとから追加提案できる商品が少ないのですが、プランが確定し、お客さまが購入の意思を示したあたりで、住まいと密接に関連する商品、またはそれに関係する人を紹介することができます。
事例をいくつか紹介します。ほぼプランが固まり、お客さまが住宅を購入する意思が固まってきたところで、リビング埋め込み型スピーカー付きのホームシアターを提案している営業マンがいました。業者とタイアップする必要はありますが、映画が好きな方、音楽が好きな方の場合は、興味を示す可能性は高いです。また、住宅購入をきっかけに、ライフプランを考え直すきっかけになることも多々あります。そんなときに、生命保険の見直しなどを提案し、ファイナンシャルプランナーを紹介することができます。さらには、電化製品、家具、服飾品などにかける家財保険(建物の火事のときに備えた火災保険は、ローン契約時に入る)などの取扱先を紹介するのもいいでしょう。
このように、お客さまがある程度高額な商品を購入する意思を示した時、購入を決断したタイミングで「関連する商品」を提案してみるのです。とくに、保守点検サービスの提案は、お互いにウィン・ウィンになるケースが多いので、躊躇(ちゅうちょ)する必要はありません。みなさんの販売する商品やサービスによって、追加で提案する商品が変わってきますが、営業マンの工夫しだいで、さらに売上を上げることが可能なのです。
お客さまが購入した直後が、一番財布の紐がゆるむ瞬間です。ぜひ、このタイミングを見逃さず、営業マン側とお客さま、どちらにとってもメリットとなる商品やサービス、もしくは、契約条件の見直しなどを提案してみてください。