現在私の職場では、早く帰りにくい空気が蔓延しています。
会社に長い時間いることが美徳というか、勤務時間がそのまま評価に繋がっているような風潮を、正直強く感じて悩んでいます。
私は、早く家に帰るために毎日効率よく自分の仕事を終わらせ、そのうえで実績も悪くはないと自負している部分もあります。しかし、ある日別件で部長に話を伺ったところ、明らかに私より仕事が非効率的で会社に長時間残っている(私より実績も明らかに低い)同僚の方が、評価が高いと強く感じることがありました。
必ずしもこの会社では勤務時間が評価に直結しているとは言い切れませんが、ワークライフバランスを大切にしていきたい私にとって、効率的な仕事やその実績が評価に結びつかない今の会社に疑問を感じています。私は今後、部長やそれ以上偉い方にこのことを相談すべきでしょうか、それとも思い切って自分のスキルを活かして転職すべきでしょうか。
生命保険会社勤務(営業職) / 32歳 / 女性
会社に長い時間いることが美徳とされる風潮、まさに昔からのザ・日本の風潮という感じですね。せっかく仕事を効率よく終わらせて帰宅しようと席を立って辺りを見渡すと、上司はチラチラこちらを見ながら、「私より早く帰るのか?」「もう帰るのか?」と言わんばかりのサイン。同僚は同僚で、そんな状況を察してか、机にしがみつき、「忙しい、忙しい」を口癖に仕事をしているふり。帰宅しにくいといったらありはしないですよね。しかも、そのことが評価に関係するとなれば、もうやりきれない気持ちで一杯になりますね。
以前、私も職場であなたと同じことを感じ、随分ともどかしさに悩まされた経験があるので、よく分かります。しかし、だからといって、もっとワークライフバランスが重要視できる職場に転職しましょう! という単純な結論をお薦めするわけではありませんので(笑)、心を静めてちょっと一緒に考えてみて下さい。
まず、自分自身に、自分は何のために働いているのか問いかけてみて下さい。生活するため、家族を守るため、夢を叶えるため、その他にもさまざまな理由があると思います。しかし、ワークライフバランスに重心をおいたお悩みの文章からすると、きっとあなたは評価され、認められるために仕事をしているのではないと思います。もし、そうであれば、あなたは周りの視線や評価を気にせず、あなたらしい仕事への姿勢を貫き通すべきです。
もちろん、賞与の評価などに関係することもあるかもしれません。しかし、これは今のあなたがおかれた環境でワークライフバランスを重視するがために生み出された、あなた自身が受け止めるべき責任でもあるのです。どんなことでも、何かしらの行為をなすと、何かしらの因(原因)と果(結果)が生まれます。つまり、あなたが直面している状況も、ワークライフバランスを重視する行為によって生まれた結果ということになります。
ここで少し頭を切り換えて頂きたいのですが、どんな仕事でも1人ではできないことはご存知だと思います。これは職場にも同じことがいえます。職場の中で、皆がそれぞれに与えられた仕事に専念し、会社が運営できるように売上に貢献しています。そのおかげで、あなたも、上司も同僚も給与を頂いて生活できています。こう考えてみると、ある意味、人生共同体なのです。
仏教には、「諸法無我」(しょほうむが)という教えがあります。これは、「諸々の法(ここでは「物事」の意味)には我が無い」と書き下し、「物事は何ひとつとして単体として独立して存在いるのではなく、すべて繋がっている(だから我というものはない)」という意味です。英語で超訳すると、「One for All. All for One」(1人は皆のために、皆は1人のために)と考えることができると思います。
そういう意味では、皆のために、少しだけでも周りの方に合わせてみることも必要かもしれません。自分の要望(一種の我)を通すには、自分も少し周りに合わせてある程度あなた自身も変容してみる努力も大事です。
提案として、効率のよさを少しだけ崩し、30分だけでも長くデスクにいるようにしてみては如何でしょうか。きっとそれだけで、表層的な評価は上がると思いますよ。ちょっとした30分で変わるなら、転職するという大きなエネルギーを使う必要もありません。
しかし、それでもだめなら、同じような思いを持つ同僚がきっといらっしゃると思うので、相談して一緒に社内で議論してもらえるよう、総務担当者か上司にお願いしてみてもいいと思います。もちろん本気でワークライフバランスの充実化を図るならば、外資系の会社への転職という道もあるでしょう。自由な分、とっても厳しい環境でもありますが。
この世の真理として、基本的には、どこへ行っても物事は自分の思うようになりません。そうならば、外へ解決を求めるのではなく、少しでも自分自身の変容という内側に解決を求めてみてはどうでしょうか。
あなたの、新しい形のワークライフバランスが構築されることを願っております。
協力:寺子屋ブッダ