私は生命保険の営業をしている女性ですが、営業先でのお客様とのコミュニケーションに困っています。
当然仕事の話は普通にできるのですが、保険の営業というのはお客様と雑談をしながら人間関係を作っていくのも仕事のうちのような部分もあります。
そこが苦手なせいか、私のことを真面目な人間だと思ってくださるお客様に対しては私も苦手意識はないのですが、仕事の話が終わった後やその合間に、いろいろと雑談になっていくタイプのお客様には、正直苦手意識があります。
営業という仕事は雑談もできなければ成長しないという側面もあるとは思うのですが、なかなか話が盛り上がるところまで発展させることができません。
新聞も読んでいますしニュースもチェックしていますが、雑談好きのお客様はそうした話題以外のことがお好きなようで、私は愛想笑いをしながらうなずいている状況です。
今後も仕事は続けていきたいのですが、どうすればさまざまなタイプの方と上手に雑談ができるようになるでしょうか。
何かヒントがあれば、ぜひ教えてください。
営業職(生命保険会社勤務) / 29歳 / 女性
生命保険の営業をされているとのこと。これまでにきっとたくさんの方々にお会いして親身になって人生設計の相談をしていく中で、試行錯誤しながらその方々にとって、最善のサービと安心を提供されてきたことと思います。とっても尊いお仕事だと思います。私自身もお世話になっており、担当の方には感謝しております。
さて、お悩みをご相談頂き、ありがとうございました。メールを拝見させて頂きましたが、いろいろと苦労されているご様子ですね。世の中にはさまざまな方がいらっしゃいますから、一人ひとりに合わせてお話するのも大変だと思います。しかし、ご自身でもおっしゃる通り、お客様と雑談をしながら人間関係を作っていくのも仕事の一部ということもあると思います。特に、この生命保険のお仕事では、お客様との信頼関係が一番大事なのではないでしょうか。お客様も自分の人生設計を預けるようなものなので、サービスや金額とは別に、「この人なら任せられる」という信頼がなければ、契約はされないはずです。
こうした当然このことを理解しているからこそあなたは悩まれていると思うのですが、そんなあなたにおすすめしたいのが、「自分の経験」をお話するということです。新聞やニュースをチェックすることも大事ですが、お客様がお話したいのはそのような時事問題などではないのかもしれません。私は、お客様はあなたのことについてお話したいのではないかと思います。別の言い方をすれば、あなたのことを聞いて知りたいと思っているということです。つまり、自分の人生設計を任せる人がどんな人なのか確認されようとしているのです。
新聞やニュースといったものは、あとで調べようと思えば自分で情報収集できます。それより、目の前にいるあなたが、自分の大事な人生設計を委ねる人が、どのような考え方を持って生活されているのか、そういったことを確認されているのではないかと思うのです。もちろん、必要以上に自分のプライベートなことをお話になる必要はありませんが、自分の過去の体験や思い出などを語る中で、自然とあなたらしさや人間味が伝わったり、深く共感することがあったり、話に花が咲くこともあると思います。こうして相手にもあなたにも安心感が生まれてくるのです。
これを「以心伝心」(いしんでんしん)と言います。「心を以(も)って心に伝(つた)う」と読み、もともとは禅宗の言葉で、「言葉や文字で表現できない仏法の神髄を、師から弟子の心に伝えること」を意味します。つまり、言葉を使わずして意志を伝えることです。
これは理想の状態です。しかし、最初から成り立っている状態ではありません。その過程では、たくさんの言葉や意見を交わし、その繰り返しによりお互いがお互いを少しずつ理解する必要があります。すると、徐々にその言葉の交換回数も減り、最終的には言葉を使わずしてもお互いの意志が伝わるような、穏やかな雰囲気が生まれるのです。
一見、「仕事」と聞くと、業務的で冷たい感じを持つ方が多いと思います。もちろん、業種によってはそれでも問題ないこともあります。しかし、あなたの従事する仕事はそうはいかないでしょう。あなたの仕事は、人と人との繋がり、信頼で成り立つものです。お客様との繋がりや信頼がなければ、よい結果を生むことはできません。
お客様との繋がりや信頼を構築するためにも、まず頑張って自分のことを話すことから始めましょう。そうする中で、あなたとお客様との間には、お互いの信頼で結ばれたよい関係と雰囲気が生まれるのではないでしょうか。そして、気がつけばきっとあなたの愛想笑いは、いつの間にかに本当の微笑みや笑顔に変化していくと思います。その時、私はあなたがまた一段と今の仕事が好きになり、さらなる飛躍をされることだと思います。
これからのあなたの飛躍を心より願っております。
協力:寺子屋ブッダ
尚、本連載は今回をもちまして終了となります。
7月より大來尚順氏の新たな連載企画がスタート致しますので、ぜひご期待下さい。