私は今の会社の中で、デザイン系の専門の仕事を任され、それをこれまでは一人でやってきました。
しかし、会社の業務拡大に伴い、即戦力のデザイナーが一人、私と同じ立場という形で転職してくることになりました。
もちろん今までは私一人でデザイン系の全ての仕事をこなしてきたので、物理的には今後の会社の業務拡大を考えれば、非常に有難く思っています。
しかし、一方でこれまでは存在しなかったライバルが出現する形になるので、自分自身ももっと勉強してスキルを磨き、「新たに入社してくる人に負けないようにしなくては」とも思っています。
ただ、現状では日々の仕事に忙殺されており、なかなかそうした時間が取れないのも現実です。
また、今までは存在しなかった直接的なライバルの出現に、自分自身プレッシャーを感じている部分も否めません。
確かにライバルの出現というのは、自身のスキルアップにとっていい刺激だと思っているのですが、弱気になってしまう自分もいます。
どうしたら平常心を保ちつつ、自分がスキルアップしていけるでしょうか。
Webデザイナー(ITベンチャー企業勤務) / 32歳 / 男性
会社の中でデザイン系の専門のお仕事をされているとのこと。とても羨ましいです。私は、本当にセンスがなく、よく社内の広報に関するデザインなど尋ねられても、決まって私が選択したデザインから選択肢が消えていき(笑)、「そんなにだめか?」と自分のセンスのなさに悲しみを覚えます。きっとあなたは色合いやユーザーのことなど、総体的に考えて素晴らしいアートを生み出されているのでしょうね。自分にはないセンスと技術なので、本当に羨ましいかぎりです。
さて、お悩みを拝見させていただきました。急なライバル出現に動揺されているようですね。その気持ち、よくわかります。実は、私も同じ経験をしたことがあります。私の場合は、スキルアップを考える前に、これまでの自分のテリトリーが侵され、そして仕事や居場所を奪われてしまうような気がして、苛立ち、寂しさ、焦りを感じていました。おそらく今のあなたも同じではないでしょうか。ですから、あなたが弱気になってしまう気持ちもよく分かる気がします。
そんなあなたにお伝えしたいことがあります。それは、新しく転職されてくる方は、あなたと争うためにくるのではないということです。会社のために一緒に頑張る新しい仲間として、あなたの前に現れるのです。そう、実はライバルではないのです。
おそらく、これから転職してこられる当の本人は、同じ仕事をするうえで、会社からあなたのことを聞いてはいるでしょうが、敵対心など何も持っていないと思います。ましてや、あなたのライバルになろうなどと、微塵も思われていないと思います。つまり、あなたが勝手に相手をライバル視し、その眼差のために自分で自分の首を絞めているのです。今のあなたは、まるで独り相撲している状態なのです。
その相撲を止めるためにも大事なのが、「八正道(はっしょうどう)」というものです。
これは、仏教において「苦」というものを停止させるための八つの方法を束ねた生き方を指します。その八つとは、正見(正しい見方)、正思惟(正しい考え方)、正語(正しい話し方)、正業(正しい行い)、正命(正しい生活)、正精進(正しい努力)、正念(正しい心構え)、正定(清らかな境地)です。
ご覧の通り、この八つはすべて繋がっています。どれが欠けても成り立たないひとつの生き方なのです。しかし、どこからかメスを入れて実践していかなければなりません。
私は、今のあなたに必要なのは「正見」だと思います。自分に固執した考え方で転職されてくる方を判断するのではなく、温かく迎え入れる姿勢が必要だと思います。あなたが一緒に仕事をしようという気持ちさえ持っていれば、自ずと適した考え方、お話の仕方、行動が生まれ、結果的にはあなたのスキルアップに繋がることでしょう。
新しく転職されてくる方が最初にあなたに思うことは、これまで一人でデザイン系の専門のさまざまな仕事を対処されてきた、あなたへの尊敬の念だと思います。あなたがこれまでやってきた仕事は、誰も奪うことも触れることもできないあなたの勲章です。弱気になることはありません。
しかし、せっかく相手が抱いてくれた尊敬の念を、あなたへのライバル視や競争心へと駆り立てるのか、それともお互いに刺激を与え合いながらスキルアップして会社を盛り立てて発展させるか。それは、あなたの行動次第です。あなたが相手に敵対的な思いを持ってしまえば、それはどうしても相手に伝わってしまいます。
あまり余計な心配をせず、これからも従来通り、会社のため、自分のために「今」自分ができることに専念されて下さい。これが平常心を保ちつつ、あなたがスキルアップしていける第一歩だと思います。
これからのあなたのさらなる活躍を願っております。
協力:寺子屋ブッダ