ビジネス駆け込み寺

中間管理職の人が機能してくれず困っています

2016.04.04 公式 ビジネス駆け込み寺 第13回

中間管理職の人が機能してくれず困っています

私はアプリのエンジニアをしている女性ですが、私の直属の中間管理職の男性が、本来やらなくてはいけない仕事をおざなりにしていることに困っています。

その男性は、私たちが何度指示を仰いでも明確な答えをくれないため、さらにその上の上司に相談をして、この現状の改善を試みるミーティングもしているのですが、一向に彼は改善の兆しもなく、その上の上司も手を焼いています。

さらに悪いことに、その彼は本来の業務以外の部分で最近会社に認められて忙しくなっており、それを盾に本来の業務はどんどん疎かになっています。

このままでは、私たちは方向性の見えない仕事がどんどん増え、いつか仕事のペースが追いつかなくなる日がくるのではないかと不安でなりません。

こういうタイプの方は、自身が得意な分野があるのであればそちらに専念して頂き、本来の彼の役割を務める人材を別に配置して欲しい。そんな現場の意見も多数出ています。

私は抜本的な改革が必要だと思うのですが、どうするべきでしょうか?

アプリエンジニア(システム制作会社勤務) / 34歳 / 女性

私もまったく同じ体験をしたことがあります

アプリのエンジニアをされているとのこと。私はいつもさまざまなアプリにお世話になっております。しかし、そのアプリをお作りになっている方とこうしてお話ができるのは、大変光栄なことです。きっと複雑で大変な作業をされていることだと思います。私はIT系にかなり弱いため、本当に尊敬します。

さて、お悩みを拝見させて頂きました。直属の中間管理職にあたる上司の仕事への姿勢に不満や不安を感じておられるようですね。あなたのメールを読む限り、問題となる上司の方は、あなただけではなく、さらに上の上司や同僚の方々にもご迷惑をかけ、あなたに怒りの気持ちまで持たせてしまっているように感じられます。
あなたの気持ちはよくわかります。私があなたと同じ立場であったなら、きっとあなた以上に怒りを感じてしまうでしょう。しかし、怒りに身を任せてしまえば冷静な判断もできず、気持ちも穏やかでいられなくなり、余計に疲れてしまうだけなので、何度か深呼吸をしてから気持ちを落ち着かせて、この回答を読んで頂きたいと思います。

実は、私もあなたとまったく同じ状況を体験したことがあります。自分の利益になることや得意な仕事しかせず、細々した雑務は私をはじめとする部下や同僚に丸投げする上司がいました。実務は一切できないにも関わらず、物事に口だけはだし、無視すればすねるという、本当にややこしい方がいらっしゃいました。
しかも、その方は会社のトップにあたる方とのコネもあり、その間にいる幹部や部下にあたる私たちは本当に困っていました。その方は私の席の目の前に座っていたので、その頃は本当に心が荒れて大変でした。
しかし、あるとき状況が一変しました。少しずつ問題の上司の状況の歯車がうまく回らなくなりました。結果的にその方は誰からも仕事の声も掛けられることがなくなり、最終的に退職されました。正直、そのときはホッとしました。

自然に不満や不安は解消されていきます

「盛者必衰」(じょうしゃひっすい)という仏教用語を聞いたことがあるでしょうか? これは「この世には常であるものはなく、勢いの盛んな者もいつかは衰え、滅びる」という意味です。この世に何ひとつとして変わらないものはありません。あなたが問題視している上司もおそらく、私の上司だった方と同じ結果を迎えるか、何らかの変化を受け入れるべき局面がくることになると思います。ですから、あなたが今直面している状況も長い目で見れば変化し、少しずつ不満や不安は自ずと解消されていくと思います。

しかし、これでは何も解決したことにはなりません。実は、私の上司の歯車が合わなくなりはじめてから退職されるまでの期間、私は彼の表情や雰囲気が悲しく、暗く変化していく様子を見るのが辛く、どうしてあのとき何か声をかけてあげられなかったのか、今でも後悔しています。
風の噂でその上司は別の会社へ移っても同じことを繰り返し、また退職せざるを得なくなったと聞きました。これは負のエネルギーの連鎖であり、実は一番本人が苦しまれているだろうと思います。

ここであなたにお願いしたいのは、あなたの上司に諦めを感じるのではなく、その方を育てるという気持ちを持ってみてほしいのです。組織というのは、機械や物ではなく、人と人との関係で成り立っています。ですから、チェスの駒を動かすように、人を動かして入れ替えるという単調なことでは、根本的に問題は解決しないのです。もし入れ替えるのであれば、その対象は人ではなく「人の心」なのです。

できれば、全体会議を開くなどして、あなたを含む職場で皆がその上司に何を求め、どのような不安を感じているのかを気が付かせてあげて下さい。
1つだけ注意して頂きたいのは、どんなに正しいことを伝えるにしても、思いやりの気持ちがなければ人は傷ついてしまいます。どうか、あなたの上司に心の変化をもたらすきっかけを与えてあげて下さい。

最初から物事を何でも上手にできる人はいません。今の中間管理職の上司の方にも、今後立派な中間管理職になってもらうという大きな思いで対応してみて欲しいです。辛い部分もあるかと思いますが、ここを乗り越えた先に、気持ちのよい職場の環境変化が待っていると思います。

協力:寺子屋ブッダ

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

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