ビジネス駆け込み寺

仕事と結婚の間で揺れ動いています

2016.03.22 公式 ビジネス駆け込み寺 第12回

仕事と結婚の間で揺れ動いています

私は広告代理店に勤務する女性ですが、現在の職場では微力ながらリーダー職をまかされており、数名の部下もいます。

しかし、プライベートでは数年付き合っている男性がおり、最近結婚の話が持ち上がっています。

そんな話の中で、彼は結婚したら私には家庭に入って欲しいという希望があり、逆に私は結婚してもこのまま仕事を続けたいと思っています。

もちろん当人同士のことなので2人で解決するのが当然だとはわかっています。

ですが、何か私が仕事を続けながら彼と結婚するという方向にもっていけるいいアドバイスがあればお聞きしたいと思い、ご相談したしだいです。

お恥ずかしながら、いいアドバイスがあればぜひご教授願います。

広告代理店勤務(営業職) / 29歳 / 女性

素直なお互いを見つめ直しましょう

多忙な広告代理店で、29歳にしてリーダー職を任され、ご活躍されているとのこと。リーダーとして部下に指示を出したり、ときには部下の相談にのったり、そんなあなたの職場での様子を想像するだけで、本当に元気を頂ける気がします。
また、プライベートな面でもお付き合いされている方とよいお話に進みつつあるようで、嬉しい限りです。今後、家族になるということで、これまでとは違った重みや視点でさまざまなことを二人で考えていくことになるでしょう。
今回のお悩みは、その中の1つだと思います。このことで現在、ギクシャクしていたり、ケンカになっていないことを願っています。

何かあなたが仕事を続けながら、彼と結婚するという方向にもっていけるアドバイスを要望されていますが、正直に言いますと、あなたの要望にお応えするのは大変難しいというのが本音です。もちろんあなたと同じような相談を受けることはありますが、いつも私が返答するのは、「二人で納得のいく結論を出して下さい」ということだけです。今回もこう返信しようと思っていました。

しかし、あなたのお悩みメールから「彼と結婚したいからこそ、どうにかしたい」という思いが強く伝わってきたので、どうにか丸く結論を出す手助けとなる視点をご紹介するということで、今回の返答とさせて下さい。

まず、あなたにお願いしたいことがあります。それは、なぜ彼があなたに仕事を辞めてもらいたいのか、もう一度よく聞いてみて頂くことです。しかし、ポイントはそのときに、あなたの「自分の仕事を続けたいという思い」は一旦忘れて下さい。このある種の「我の思い」が全面に出ていると、どうしてもフィルターがかかってしまい、彼の話を純粋に聞くことができません。その結果。その要望の奧に込められた彼からあなたへの思いや、本来の優しさなどが見えなくなってしまいます。

これを仏教では「正見」(しょうけん)といいます。字の如く、「正しい見方」を意味します。自分の「我の思い」や先入観というものを一旦忘れて、目の前にある物事をあるがまま受け止めることで、それに対する正しい反応ができるようになります。

まずは自分が折れることから

ひょっとしたら、あなたのこれまでのキャリアなどを無視してしまうような、彼の身勝手な考えなどもあるかもしれませんが、もしあなたが彼の話を素直に聞くことができれば、そこから彼の要望に対してどのように自分の考え方をフィットさせ、あなたの希望が叶うのかを考えることができるようになります。ある意味、こちらの方が優位です。

大事なのはここです。「まず自分が折れる」ということです。まったく別の生活環境や習慣で生まれ育ち、考え方も感性もまったく異なる2人の人間が一緒になろうというのですから、最初から意見が合致するということは滅多にありません。お互いの我を固持すれば、ぶつかって終わりのないケンカをするだけです。このことを念頭に置き、相手の意見を尊重し、自分の意志を曲げながらも間接的に自分の意志を通す方法を取って下さい。

そしてもし可能であれば、彼にも、あなたがなぜ仕事を続けたいのかということを聞いてもらって下さい。そのとき、あなたがどれだけ仕事への情熱や仕事を続ける意味を持っているのか、語ってもいいでしょう。そうすると、彼の結婚への思いの強さにもよりますが、どうすれば自分の要望をあなたの要望にフィットさせることができるのかを考えてくれるようになります。

こうして2人が折れていくことで、丸い結論を出すことができるでしょう。これは私の想像ですが、あなたの素晴らしいキャリアを考えると、以前は「無理に結婚をしなくても大丈夫」という思いがあったのではないでしょうか。そんなあなたの意志を変えてでも彼との結婚を望まれるのですから、あなたの思いも彼に伝わり、よい結論に結び付くことを願っております。

まずは、冷静に相手の気持ちを受け止める「正見」を大事にすることからはじめて下さい。お2人の幸せを心より願っています。

協力:寺子屋ブッダ

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

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