ビジネス駆け込み寺

言い方にトゲがある上司の言葉に、辛さを感じています

2016.02.01 公式 ビジネス駆け込み寺 第9回

言い方にトゲがある上司の言葉に、辛さを感じています

私は現在、課長として頑張っているのですが、直属の上司である部長の「モノの言い方」に辛い思いをしています。

その部長は仕事が素晴らしくできる方なのですが、部下である我々に対しての言葉が非常に厳しく、私からすれば「もっと普通の言葉で応対してもらえれば、部内の空気もよくなるのに」と思ってしまいます。

もちろん何か失敗した際に叱咤されるのは当然のことですが、普段何か仕事の質問をしても、非常に冷徹というか、無機質で心に刺さるような言葉で答える方なのです。

私個人としては、もう少し人間同士として優しさや思いやりのあるコミュニケーションをしたいと思っていますが、最近では部長の顔色をうかがいながら仕事をするようになっています。

私が感じていることは、ビジネスマンとして甘いのでしょうか?

できれば私は円滑な職場の空気や上司との良好な関係を構築したいのですが、何かいいアドバイスをいただけないでしょうか。

製造業勤務 / 36歳 / 男性

上司の方を反面教師と思ってみてください

お悩み相談ありがとうございます。お悩みの内容を読みながら、あなたが自分だけではなく、部下や他の職員を含む職場全体のことを考えていらっしゃることがよく分かりました。しかし、その優しさや課長としての責任感が故、あなたは現状をどうにかできないかと苦しまれているのだとも感じました。円滑な職場の空気や上司との良好な関係の構築は理想ですが、なかなか実現は難しいですよね。

さて、あなたが直面している問題として、上司の「モノの言い方」が大変ネックになっているようですね。何を言っても冷たくあしらわれ、仕事のことなのに話しかけにくく、それでもどうしても相談しなければならないことなどがあって、本当に胃が痛くなる思いでいらっしゃることでしょう。しかし、その痛む胃に手を当てて少しお話を聞いて頂ければ幸いです。

世の中にはさまざまな「苦しみ」がありますが、あなたの「苦しみ」は仏教でいう「怨憎会苦」(おんぞうえく)というものに分類されると思います。これは、どんなに会いたくない人や嫌いな環境・状況でも、どうしても対面しなければならない苦があるという真実を指しています。これはどこに行っても避けることはできない現実です。ご自身の過去を振り返ってみても、どこかしら自分とは気が合わない人がいたり、嫌な状況があったことに覚えがあるのではないでしょうか。

これはアドバイスになるかわかりませんが、あまりあなたの上司に期待しないことをおすすめします。人の性格や習慣が突然変わるということは滅多にないことです。ではどうするのかということですが、これは円滑な職場の空気や上司との良好な関係を望み、どうにかしたいと悩まれているあなただからこそお伝えできることですが、上司を反面教師と思い、あなたは上司のような態度や姿勢を取らず、同僚、部下、そして上司にもあなたらしく優しさを持って接していくことを心がけて下さい。私は、あなたの自分だけではなく、職場全体のことを思う気持ちは宝であり、希望だと思います。どうか大切にされて下さい。

考えを否定しても「存在」を否定してはならない

また、ちょっと別の視点からもお話しさせて下さい。この世の中にはいろいろな人がいらっしゃいます。しかし、その中には悪気がなくても無意識に冷徹なことを口にしたりしてしまう方もいらっしゃいます。人はそれぞれ生まれ育った環境やこれまで生きてきた経験が基盤となって、その人の性格や習慣が形成されます。つまり、この世に誰1人として自分とまったく同じ環境に生れ育ち、同じ体験をする人など存在しません。ですからみんなそれぞれ異なった性格、価値観、習慣を持つのです。これがときとして相互理解ができず喧嘩の種となることもありますが、みんなそれぞれ特徴を持つという1人ひとりの尊さでもあるのです。それは、あなたも、あなたの上司も、私も同じです。

私自身いつも心掛けていることがあります。それは、人の考え方を批判し否定することはいいとしても、その人の存在を批判し否定することは避けなければならないということです。私が思うに、ひょっとしたらもどかしさで一番苦しまれているのは、素直になりたくても素直になれないあなたの上司かもしれません。本当は冷徹な態度を取ったり、冷たいことを口にはしたくないけれども、これまで生きてきた環境や形成された性格上、どのようにして優しい態度で反応したり、優しい言葉を返せばよいのか分からない状況にあるのかもしれません。だからこそ、私は逆に優しい姿勢も持ち続けるあなたが、上司のお手本になれるのではないかとも思うのです。どうか、この視点も大事にして頂けたら幸いです。

今は辛いのはよくわかります。しかし、どうか円滑な職場の空気や上司との良好な関係という理想を持ち続けて下さい。きっとあなたがしかるべき役職についたとき、その理想は実現されることだと思います。ビジネスマンである前に、人であることを大事にされているあなたを応援しています。

協力:寺子屋ブッダ

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

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