気温もだいぶ下がり、季節が秋から冬に変わりつつこの時期、楽しみの一つの紅葉狩りがあります。山々の木々がファッションショーをするかのように葉の色を変え、赤を中心としてさまざまな色のコントラストを作り上げる様子は、本当に素晴らしい自然の美しさの一つだと思います。
私もこの季節を毎年心待ちにしている一人なのですが、この紅葉の季節に必ず思い出すことがあります。それは、私が学生時代にアメリカのワシントンDCにホームステイをしていたときのことです。その思い出に浸りながら紅葉を眺めるというのが、近年の私のルーティーンです。
当時、アメリカに留学していた私は、長期の休みがあればバックパッカーをしながらアメリカを旅していました。ある時、友人の紹介で、ワシントンDCの郊外の森の中に位置する知人の家に、約1週間ホームステイさせて頂くことになりました。ちょうど季節も今と同じ11月中旬を過ぎた頃だったと思います。アメリカの東海岸には、日本と同じく紅葉の季節があり、日本とはまた違った色の鮮やかさが広がっていたことを今でも覚えています。
ホームステイ先には、当時80歳のおじいさんと日系アメリカ人の奥さまがいらっしゃいました。このおじいさんは、もともとは大阪出身で、50年以上もアメリカに住み、アメリカ議会図書館のレファレンス局東洋部日本課でずっと勤務されていた方でした。とっても優しい顔をされたおじいさんとおばあさんで、田舎でおばあちゃん子として育った私には、本当に嬉しく懐かしい時間で、心地のよいものでした。
基本的にはホームステイ先の家を拠点として、私はワシントンDC市内を観光して回ったり、勉強していた分野で有名な方が現地の大学にいらした時は、面会したりしていましたが、必ず夕方には家に戻り、夕飯を一緒に食べるようにしていました。また、何も予定のない時は、庭やガレージの掃除のお手伝いをしていました。
その老夫婦はとてもおしゃべりの好きなお二人で、おじいさんの昔話、二人の思い出など、毎日たくさんのお話をお聞かせ頂きました。三人で話す時は英語を話していましたが、おじいさんと二人になると、おじいさんと私は日本語で話していました。しかし、50年以上もアメリカにいても方言は抜けないらしく、こてこての大阪弁でお話しされる姿に思わず笑ってしまうこともありました。