ビジネス駆け込み寺

学校を精一杯楽しめなくて苦しいです

2016.01.06 公式 ビジネス駆け込み寺 第7回

学校を精一杯楽しめなくて苦しいです

私は高校1年生の頃に難病指定の病気になってしまい、2年生から通信制高校に通っている高校3年生です。しかし、どうしてもこの学校生活を心から楽しめないのです。

通信制でも大学などの進学に対応しているということで、他に行くことができず藁(わら)にもすがる思いでこの学校に転校してきましたが、実際授業を受けてみると、正直いって受験に対応できるとはいえない内容でした。それでもこれが今自分の置かれている状況なら、自分のやれることをやろうと思い、今はやりたいことに向かって頑張っています。

でも、やはり学校生活に満足ができないのです。
私はこの状況で、自分なりに充実できる何かを探したらよいのでしょうか。
しかし、この1年半すごしてきて見つけることができませんでした。
正直、学校の制服をきて外を歩くのが恥ずかしいです。
今の私は劣等感と自己嫌悪でいっぱいです。

学校には仲がいい友達もいますが、この悩みは言えないし誰に相談したらいいのかわからず苦しいです。これから大人になっても、私には青春の高校時代の思い出がないのです。

今後の人生でそれ以上のものを作っていけばいいのかもしれませんが、高校時代にしかできない思い出が欲しかったです。なぜ私はこんな一生治らない病気になってしまったのかなど、考えても答えの出ないことばかり考えてしまいます。
どうしたらこの劣等感と自己嫌悪から抜け出し、心から学校生活を楽しむことができるようになるのでしょうか? 
このコーナーは働いている方のお悩み相談なのはわかっていましたが、どうしても大來さんにご意見を頂きたく、質問させて頂きました。よろしくお願いします。

高校3年生 / 18歳 /女性

「青春」を別の角度から考えてみましょう

誰にも言えない悩みを打ち明けて頂き、ありがとうございます。きっと勇気のいることだったと思います。何度も何度もあなたのお悩みを読み返しました。そして、気がついたら涙が出ていました。難病が原因で大好きだった学校から今の学校に通うことになり、さまざまな環境が変化し、勉強や部活動が思うようにできなくなったのは、本当に辛かったでしょう。それでも難病と闘いながらも自分の目標に向かって歩んでこられたあなたは本当に立派だと思います。これは並大抵のことではなかったでしょう。辛かったね、本当に苦しかったね。

あなたの「どうしたら劣等感や自己嫌悪から抜け出し、残りのあと僅かな学校生活を心から楽しむことができるのか」というお悩みの直接的な解決になるか分かりませんが、どうか今の自分や環境に焦りを感じないようにして、私の話に耳を傾けてもらえたら幸いです。

最初にあなたにお伺いしたいのは、青春という言葉の意味です。
どのようにお考えでしょうか?
一般的には、青年少女時代に友達と楽しい時間をすごしたり、甘酸っぱい恋愛のように認識されています。確かにそれも青春かもしれませんが、私の思う本当の青春とは、「答えのない問いに対し、答えを出そうと精一杯努力しぶつかっていく」ことです。

あなたが心のどこかで、どうしても以前の学校や周囲の友達と今の自分を比較したり、もし転校していなければということを前提として、「たら」、「れば」の自問の連続をしてしまう気持ちはよく分かります。
しかし実は皆それぞれ苦しんでいて、あなたが思っているほど充実していなかったり、幸せを感じているとは限らないのです。人は皆誰にも言えない苦しみを持ち、それに悩みながら生きています。しかし、それを人にさとられないようにして上手に生活しているのです。あなた自身にも思い当たる節はありませんか?

そして、周囲からすればやりたいことがあって、それに向かって頑張っているあなたの姿の方が、とっても充実した生活をしているように見えていると思います。私は、あなたが持っている目標に打ち込むことが、あなたにとっての青春であり、充実した高校生活なのだと思います。今すぐにあなたの高校生活が心から楽しいものになるのは難しいかもしれません。しかし、この青春という時間は必ずこれからあなたが巡り遇う幸せに導いてくれる助走期間になってくれます。そして結果的には、「あなた」にとってすべてが充実したものとなるでしょう。

あなたは、そのままでいいんです

確かに日本の社会では、まだ学歴でさまざまなことを判断されるような部分もありますが、それは実際にはあまり役立つことではないです。偏差値の高い大学を卒業したからといって、社会で立派な仕事をしたり活躍できているかといえば、まったくそんなことありません。大事なのはどんな場所や状況であろうと、あなたが目標達成のためにどれだけ努力したかです。

これはあまりいい例ではありませんが、正直にお話します。
私は小学校・中学校とまったく勉強が苦手で、テストの答案用紙に答えではなく絵を書いたり(笑)、通知表なんてアヒルでした(五段階評価でオール2のことを言います)。それでも「自分は社会に何ができるのか」という問いをずっと持っていて、それに向けてひたすら努力しました。その変わりように、ときにはバカにされたり、いじめられたり、本当に苦しい思いをしました。それでも努力に努力を重ね、やっと今があります。

私からみれば、今の苦しむあなたの姿こそが青春だと思います。以前の学校ではなく、今の学校や環境だからこそ見つかった、あなたの思いや目標があると思います。これらはあなたの成長の証であり、かけがえのないものです。どうかこれからを大切に生活してみて下さい。そして、今の学校から羽ばたいて、社会的な偏見や常識を跳ね返して下さい。私はあなたにならできると信じています。本当に、心から応援しています。

そして、最後に私の大好きな言葉をお贈り致します。「Be as you are」(あなたはあなたのままで、そのままでいいよ)。無理して、頑張りすぎないようされて下さいね。

協力:寺子屋ブッダ

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

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