お恥ずかしい悩みなのですが、どうやら誠に残念なことに、私は部下にとって慕うべき課長ではないようです。
他部署の課長が指示すると、なぜか私の部下は従うのに、同じような指示を私が出しても、あからさまに反論してきたり、ひどい場合には、男女問わず私の揚げ足を取ってきたりします。
当然、私に人望がないのが一番の原因だとは思っていますが、会社という組織の中で、この現状にどう対処すべきでしょうか。
厳しく言うことで解決するとは当然思っておりませんし、私自身の、部下にとっての見え方を変えていく必要があるのも承知です。
いろいろとリーダーシップなどの本を読んで自分なりに勉強してはおりますが、なかなか思うように部下は動いてくれません。
やはりこうした状態のままでは、誰にとってもいいとは思えませんよね。
まずこの状況で、私はどう行動し何をしていくべきでしょうか。
電子部品メーカー勤務(営業職) / 36歳 / 男性
36歳という若さで、課長というポジションにいらっしゃるとのこと。素晴らしいですね! きっとコツコツ仕事をされ、結果を残されてきた積み重ねなのだと思います。同年代として、とても嬉しく、私自身とても元気を頂いた気がします。
しかし、いざそのポジションに就くと、就いた者にしかわからない責任、苦しみ、辛さがあるのでしょうね。お悩みからもそのことがよく分かります。精神的にも辛く悲しい思いをされているのですね。私自身、悲しく胸に痛みを感じます。まず、どうかご自身を責めないようにされて下さい。
あなたのお悩みを何度か読んで、「人望」と「リーダーシップ」という2つのことが印象に残りました。「人望」の問題については、私はあなたに「人望がない」ことが問題なのではないと思います。あなたは自分に「人望がない」と言えるほど自分を深く見つめ、反省までされています。普通、なかなかそんな否定的なことを自分自身に言い聞かせることができる正直な人はいません。あなたのその思いは、本当に誠実な姿勢だと思います。
しかし、お会いしたことがないので間違っていたら申し分けないのですが、ひょっとしたらあなたは恥ずかしがりや、もしくはご自身をさらけ出すのが苦手なのではないかと思います。真面目過ぎるが故に、周囲とコミュニケーションが上手く取れないことはありませんか? ひょっとしたら部下の皆さんは、あなたを誤解していることが多いのではないかと思います。そして、あなた自身も部下の方々を誤解していることもあるかもしれません。
1つの提案として、1人ひとりは難しいかもしれないので、少人数の部下の方々と美味しいお酒やご飯を召し上がりながらゆっくりお話してみては如何でしょうか? しかし、ここでとっても重要なのは「あなたから」自分自身や本音をさらけ出すことです。そうすることで相手の緊張も解れ、相手も少しずつあなたに心を開いてくれるはずです。これがまず第一歩だと思います。あなたの誠実さが誤解されたままなんて、勿体ないと思います。
そして、「リーダーシップ」ですが、さまざまな本を読み参考にされることも大切だと思いますが、「リーダーシップ」は人それぞれ異なります。あなたにしか発揮できない「リーダーシップ」があります。しかし、それはあなたの部下を大切に思い、接することから生まれくるものです。言い換えると、あなたの部下によってあなただけのオリジナルな「リーダーシップ」が構築されるのです。つまり、「リーダーシップ」はあなた1人では構築できないということです。
曹洞宗の開祖、道元禅師の言葉に「仏道をならうは自己をならうなり、自己をならうとは自己をわするるなり」というものがあります。これは、「仏の教えに生きるということは、自分自身を学ぶことであり、自分自身を学ぶということは、自分というものは目には見えない無数の命に支えられて生かされており、決して1人の独力で生きているのではないことに気付くこと」を意味します。
今、あなたが直面している現状というものが、あなた自身とあなたの部下が現時点で創り出している「リーダーシップ」です。しかし、勇気をもってあなたが変わろうとすれば、「リーダーシップ」も変化してきます。ではどう変わるべきか? まずは、あなたの素敵な誠実さ(自分を正直に見つめることができること)を部下の方々に知って頂き、部下を大切に思い、接することです。職場では、皆が力を合わせて仕事をし、会社というものを動かしています。同じ職場でたくさんの時間を過ごす部下、同僚、上司の方々は、皆ある意味あなたにとって家族です。そう思えば、職場の人々を大切にしたいという思いが生まれてくるはずです。その思いは、少しずつ部下をはじめ、周囲の人々の心を温かく動かすことでしょう。
物事はすぐには変わらないかもしれませんが、あなたの諦めずどうにかしたいという姿勢は必ず良い方向へと状況を導くはずです。1人でも多くの部下の方々があなたの誠実さに触れ、あなただけの素晴らしい「リーダーシップ」が発揮されることを願っております。
協力:寺子屋ブッダ