人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

中高年社員の生き残り戦略――
専門職を極めるべきか、社内マネジメントに関わるべきか

専門性を極めるとしても一定のマネジメント力は必要

もうひとつ大事なことがあります。それは専門職を極める選択をしたとしても、マネジメント力が必要になることです。組織で働く以上、一定のマネジメント力がないと、専門性を発揮することもできません。

マネジメントとは、「経営資源を有効に活用し、最大の成果を上げること」。経営資源とは、「人・モノ・カネ・時間・情報」です。専門職であっても、これらをムダなく活用し、最短距離で目標を達成することが求められます。

「マネジメントは苦手」「嫌い」という人は少なくありませんが、専門職として生き残っていくのは、それ以上に困難という現実もあります。たとえ専門職であったとしても、専門性の勉強ばかりでなく、マネジメントの勉強もしておくべきでしょう。

たとえばCGの会社などで、制作をするうえで求められるのは、やはり20代・30代の若い感性・感覚だったりします。そのため40代・50代になると、ディレクションやマネジメントがおもな業務となり、専門性だけでやっていくのは厳しくなります。

あるいは、私が営業をしていたときの上司は、大学院に行き、キャリア論を学び、修士を取って、今は大学の先生をやっています。当時も優秀な営業マネージャーでしたが、営業力だけでずっとやっていくのは、難しいのかもしれません。

ですから40代・50代に必要なのは、専門性プラス中ぐらいのマネジメント力か、本当の大マネジメント力を身につけるか、そのどちらかを決めるという選択です。

どちらの道を選ぶとしても、マネジメントからは逃げられません。40代・50代の皆さん、今からでも遅くありません。マネジメントの勉強をしましょう。

専門職とマネジメント職、どちらにも共通する目指すべき人材像

「西尾さん、専門職を極めていくべきか、社内マネジメントに積極的に関わるべきか、人事が最も見ているのは、どんなことですか?」

よくこうした質問をいただきます。人事が最も見ているのは「将来的な専門性」です。

専門職なら、社内外で「ほかにいないよね、こういう人」と言われるくらいの専門性を身につけているか。マネジメント職なら、「あの人に任せれば、課は大丈夫だよね。部は大丈夫だよね」と言われるほどのマネジメント力を身につけているか。もしくは、身につけようとしているか。人事はそういう観点で人材を見ています。

ただ、それだけではありません。マネジメント力も含めて、40代・50代の社員には、さまざまなものを求めています。以下の表は、私が管理職研修などで実際に使っている「目指すべき人材像のイメージ」という資料です。

目指す人材像のイメージ

「志向性」「意志」「考え方」「コンピテンシー」「知識・スキル」に分け、専門職とマネジメント職、どちらにも共通する、目指すべき人材像を示しています。

左側がNGな事例、右側なOKな事例です。

たとえば「考え方」でいえば、「何かをやるときは何かを捨てなきゃダメなんだよ」という「トレードオフ」や、「ケースバイケースだよね」で終わってしまう場当たり的な考え方はNG。「優先順位をつける」「ビジネスプロセスの体系化を行う」がOK。

「知識・スキル」でいえば、「全体として汎用的なビジネス知識が不足している」がNGで、「経営者が使うビジネス知識を備えており、それを前提とした会話ができる」がOKです。

これらは、専門職とマネジメント職、どちらを選択するとしても求められる要素です。こうした志向性を持つ人材に成長することも視野に入れ、今後の選択について考えてみてください。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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